【熊本】「菜の花畑から地酒を造りたい」--。そんな念願がかない、“菜の花米”仕込みの清酒「菜々」が誕生。披露発表会が3月22日、八代市内のホテルであった。
「やつしろ菜の花部会」(岡初義代表)所属の農家が、酒造用米・吟のさとの栽培に初めて挑戦し、瑞鷹(清酒「瑞鷹」醸造元、熊本市川尻)が醸した。
岡さんらは畳表などに使われるイグサ(藺草)生産業の低迷を憂い、4年前に部会を発足。その空き農地に菜の花を植え、“菜の花蜂蜜”や“菜種油”を商品化。さらに菜の花を収穫した後には、そこで米作りにも取り組み飯米品種で“菜の花米”を市販するまでに活動を発展させていた。その延長線上、念願したのが菜の花米で醸す酒だった。
吟のさとの栽培には部会に所属する生産農家7戸のうち、3戸が八代市鏡町宝出・内田地区、6反半であたった。酒造りに使ってもらう吟のさとを、「菜の花の残さをすき込み肥やしにし、除草剤の要らない健康な土と、菜種油を搾ったあとの粕でつくった有機肥料で育てた」(部会)。収量は54俵。蔵元では、同地で収穫された吟のさとの性状に合わせた精米や麹造り、醪管理を行い、1・8L換算約2000本、精米歩合65%の純米酒「菜々」を造り上げた。
「菜々」の商標登録上の読みは「サイサイ」。ラベルにある酒名は、東京の書家、藤原美江さんがイグサの筆で揮ごうし、当日の発表会には同氏と広島県の筆制作者も駆けつけた。
発表会には部会の生産農家をはじめ、福島和敏・八代市長ら行政関係者など約40人が出席。初お目見えの「菜々」は火入れの市販仕様とは異なる生酒で特別に供された。生産農家の一人、蓑田智昭さんは「味は最高」と絶賛。手塩にかけ育てたコメが、酒へと生まれ変わった喜びが言葉にあふれた。「もっといいコメが出来るよう改善していきたい」と、今期の米作りへの意欲も示した。
発表会は、部会が当日鏡町で催したイベント“菜の花ウオークラリー”に引き続き開かれた。岡代表は、「地域づくりの夢があって、八代のイグサ激減にショックを受け、菜の花を栽培し始めた」と振り返り、活動へのサポートへ感謝の言葉を述べた。
鏡町は九州新幹線沿線に広がり、同地一帯を菜の花で彩ることで“景観貢献”にもつなげたいとの思いもある。蔵元の吉村謙太郎営業部長は「地域のお酒として飲んでいただきたい」と、末長い愛飲、取り組みへの支えを呼びかけた。
「菜々」は、720ml・小売(税抜)1300円。地元鏡町の小売店を中心に、発表会の翌日から順次販売が始まっている。