美少年酒造 事故米事件、新たな波紋

2009年04月06日

 【熊本】裏金づくりが発覚した美少年酒造(下益城郡城南町、緒方直明社長)では公表翌日の4月1日、マスコミ対応で混乱が続いた。緒方社長の子息、緒方伸太郎副社長は本紙の取材に対し、「まだ詳細な状況把握ができていない」と打ち明け、今回の事件が社長の一存で行われたものだとして、会社ぐるみの組織的隠ぺいは否定した。公表に至った経緯については「分からない」とし、三笠フーズに対する一連の捜査からの波及については明らかにしなかった。同社社員にとっては、前日の社長会見は寝耳に水の出来事で、事故米事件に巻き込まれた時とは様相が一変した。

 三笠フーズの関連会社、辰之巳が安価米への買い替えで得た差額を美少年酒造へ供与。同酒造はそれを裏金に回したというもの。会見で緒方社長は、年に150万円から200万円程度を受け取り、そうした行為を2007年まで30年以上にわたり続けていたことを認めた。

 緒方副社長は、事故米と認識していたものを購入したのかとの問いには、「知っていて買ったのではない」とし、事故米による被害と今回の裏金づくりの関連は否定した。

 税制面で申告が適正に行われていたかなどについても、把握ができていない。実際には、状況把握から進めなければならないという突発的な事態に陥っており、これまでの支援に対しては、「まずは説明責任を果たし、深くお詫びをするしかない」と語り、全面的に否を認めた。

 緒方社長は辞任を表明しているが、事態が一定の落着きを見せるまでは現職にとどまるもよう。辞任時期や後任人事は全く白紙の状態だ。

 一旦、高値のコメを発注した後、安値のコメと差し替え売買差益を利得するスワップは、別段新しいやり方ではない。同社は今回の裏金づくりが、事故米事件を誘発したものではないと主張しているが、事件の被害社が、不正競争防止法違反で起訴された加害社と、実際親密な関係にあったことは否めず、広げた波紋はあまりにも大きい。

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 昨年9月、事故米不正流通の事件発覚後、同社は辰之巳に問題の有無を確認。納入米に事故米は入っていないとの文書回答を得て安心していたが、同月8日午後6時30分、九州農政局の電話で被害を知ることになった。同社の発注は国産米。納入されたコメは外米、しかも事故米ということで驚いた。破砕米での引き渡しで外米に気付かなかった。

 辰之巳からの事故米納入量は、総量で32・4tに及ぶことが判明。係わるコメで仕込まれた出荷済み清酒8アイテム、1升換算3万本の自主回収に至った。在庫の38万本分も出荷を停止した。

 一時売上高は10分の1にまで減り、売り上げが回復しないなか、同社への支援活動を個人や団体が展開してきた。