福岡酒類販売、破産手続きへ 負債30億円、有力地場卸消える

2012年03月06日

 【福岡】2月27日、酒類食品卸の福岡酒類販売㈱(福岡市博多区板付6丁目11番9号、濵田洋行社長)が事業を停止。3月上旬、破産手続開始申立を行う。負債総額は約30億円。債権者数は300者を超える見込み。昭和24年創立以来、“福酒”(ふくしゅ)の愛称で親しまれ福岡県の有力地場卸の地位を不動のものとしてきた歴史に幕を閉じる。平成21年末に発覚した、創業家を巻き込んだ内部紛争に起因する経営破たんとの見方もある。

 債務者は濵田社長ほか、創業家の神代昌幸、神代敏弘の2氏。債務者代理人は松坂徹也弁護士(松坂法律事務所=福岡市中央区赤坂1-12-15読売福岡ビル4階、TEL/092-725-5432)ほか2名。

 同社は昭和16年、大蔵省令により「福岡県酒類販売会社」(配給統制会社)として発足。24年、酒類配給公団の廃止に伴い、公団組織を承継し「福岡酒類販売㈱」となった。

 本紙が入手した、弁護士から債権者への配付文書を要約すれば、平成22・23年連続で1億5千万円程度の営業損失を出し、事業譲渡も検討したが断念した結果、となる。

 文書では、経営破たんの要因について次の通り説明している。

 昨今の不況、酒類の需要低迷により、売上の大幅減少、利益率が低下するなど収益確保が難しい状況になった。そのため同社は多額の借入をせざるを得ず、慢性的な赤字経営と借入金の返済等の増大から、資金繰り的にも窮地に陥ることになり、平成22年には1億4595万7421円の営業損失を出すに至った。

 経営改善のため大牟田支店廃止、本社移転、福岡西支店休業、定年退職者の人件費削減など、本業収益の向上による経営の立て直しを図るべく努めた。ところが東北大震災の影響による市場停滞などにより、平成23年には1億5659万5501円の営業損失を出す見込みとなったため、ある会社に対して事業譲渡を検討したが、その実現に困難を伴ったため断念せざるを得なかった。

 平成24年2月29日付け手形の決済資金調達が困難となるに至った。民事再生手続開始申立の検討もしたが、営業利益が上がる見通し、今後の資金繰りの見通しが立たないなど、これも断念せざるを得なかった。

 事業停止日の翌28日、破産事実を知ったメーカー関係者は、同社に駆けつけ、倉庫にある商品の回収にあたった。引き取りが認められたのは消費期限が短いビールや清酒など。焼酎は認められなかった。「12月の受注が大きかっただけに痛い」との声もあった。弁護士によると従業員は60人程度。「引受先が出ればいいが」との言葉で途切れた。

 同社の平成20年12月期決算の売上高は約148億円。21年末に創業の神代家をめぐる内紛が発覚した。当時の神代啓司社長を追放。社長に取締役営業部長だった濵田氏が就いた。反発した神代社長派の幹部社員が退職。信用不安を招き、また有力な本格焼酎メーカーとの特約解消も影響し、大幅に売上げを落とした。

 同社を去った幹部社員の一人は、「“福酒丸”の母体は大きくて、すぐには沈まないが、沈んでいくのは目に見えていた。その時が来た」と内部紛争が経営破たんの最大要因だと言い切った。