神戸酒心館 環境に配慮した日本酒、今年も発売

2023年06月22日

 【兵庫】神戸酒心館は、「持続可能な社会へ」という共通した理念のもとに、神戸山田錦推進研究会で地域循環型肥料(再生リン肥料)を施用して試験栽培された「山田錦」から造る「福寿・純米吟醸 山田錦 環和―KANNA―」を今年も発売する。
 神戸山田錦推進研究会は、山田錦の栽培に関して、神戸市とコニカミノルタ、兵庫六甲農業協同組合(JA兵庫六甲)他が連携し、ドローンによるリモートセンシング(高度な画像解析)を用いた試験研究や神戸市の下水道から回収した再生リン肥料(こうべハーベスト)の実用化検討を酒米生産で行うなどSDGsを軸とした循環型農業を推進している。
 6月8日には、令和4年度産の同商品のお披露目とともに、同研究会の令和4年度および3年間の活動報告についてプレス発表会を神戸市東灘区の同社で開催した。
 発表会で、神戸酒心館の安福武之助代表取締役社長は、「『環和』は発売3年目を迎えた。コロナ禍を受けてここ数年の日本酒業界は厳しい状況にあった。一方でサステナビリティやSDGsといった取り組みの必要性は高まったのではないかと思う。社会課題を解決し、持続可能な社会への貢献が期待できる製品やサービスを、サステナブル・プロダクトと呼ぶ。我々、神戸山田錦推進研究会ではサステナブル・プロダクトの開発、販売を促進することでさらなる社会課題の解決を目標としている」と「環和」開発の背景を語った。
 神戸山田錦推進研究会の藤井正孝会長(兵庫六甲農業協同組合)は、「神戸市北区は古くから山田錦の産地として、高品質な酒米づくりに取り組んできた。近年は日本酒需要の低下やコロナ禍、生産資材の高騰などを受け、酒米づくりを取り巻く環境は厳しいが、ここにきて消費の回復が見られつつある。そのような状況下で、新しい技術を用いた試験研究とSDGsを軸とした循環型農業の推進などにより、新しい付加価値を創出し、地域活性化を目的に令和2年に当研究会を発足した。この取り組みが継続し、新しい付加価値が評価され普及することで、産地はもとより地域農業、地域産業の持続的な発展につながっていくことを目的としている」とあいさつした。
 令和3年度の取り組みについて、栽培技術部会から生産者代表として神戸北山田錦部会の坂井正和氏は、「今年の山田錦は、コロナ禍が落ち着いてきたことにより、なんとかコロナ前くらいの作付け面積で行うことができた。この3年間で生産する農家も減ってきたが、なんとか生産も戻ってきたので、農家も元気を出して、これからまた良品質の山田錦の栽培に取り組みたい。再生リン肥料『こうべハーベスト』については、JAでの取り扱いも決まり、今年から大々的に栽培面積が増えていく。我々としてもこの取り組みと共にどんどん広げていきたい」と説明した。
 また付加価値創出部会から、神戸酒心館の安福武之助社長が報告を行い、「発売3年目となる『環和』は、発売本数4000本を予定している。主な販売先は、当社販売店舗や地元の小売店を中心に展開する。また近年ではサステナブルをテーマにした展示会やイベントが増えてきている。一般の消費者の方々に、こういった環境配慮型商品の価値を伝えることはまだまだ難しい。どうやってSDGsの価値を広めていくかを課題としながら取り組みを進めたい。今後の展望として、今年のお米を使った次年度の『環和』については、酒質を『純米吟醸』から『純米大吟醸』に変えたい。この3年間を経て、山田錦のクオリティや我々のお酒づくりの技術力の向上などがあったので、酒質の移行を行い、高付加価値戦略に取り組みたい。今後、海外のコンクールなどにも出品し、入賞を狙いたい」と今後の計画について語った。
 【商品概要】▽味わい(テイスティングノートより)=ふくよかさと温かみの混在したトップノーズ、甘く芳ばしい香り。グリオット・チェリー、トーストパンの香ばしさを伴った奥行きのある香り。ハリと厚みのある味わい▽アルコール分=15%▽容量=720㎖びん▽価格(税込)=2200円▽発売日=6月15日