酒造組合中央会北九州支部 事業へ、触発の機会

 【福岡】日本酒造組合中央会北九州支部(木下武文支部長)は7月17日、福岡市内のホテルで夏季恒例の経営者研修会を開催した。九州5県(福岡、佐賀、長崎=同支部所属、熊本、大分)から約70人が参加し、中央会副会長・酒井佑氏の中央情勢報告、菊正宗酒造・元常務取締役営業本部長・鍋山伊三孝氏(演題「主産地メーカーの販売戦略を語る」)、「フランス菓子16区」(福岡市)オーナーシェフ・三嶋隆夫氏(「もの作りの心意気」)の講演を聴講した。

 中央情勢を説明した酒井氏は、「清酒のように、国酒が(消費の)10%を切る国はない」として、需要振興を強調。租税特別措置法に代わる恒久法的な制度の創設も訴えた。平成18年の税制改正を「酒造法的な視点が採り入れられ画期的だったが、不十分」だとして、酒を文化とした観点での見直しを求めた。

 清酒の製法品質表示基準に関して、戻入にも言及。業界としての対応策を、「なるべく早く取りまとめる必要がある」としたうえで、「営業上、安易に戻入を認めることにも問題がある」との私見も示した。  同基準への改正要望として今回、福岡県酒造組合が今年3月26日付、中央会に提出した「要望書」(①同基準について、製造時期を「醸造年度」表示に改める②法令解釈通達「特定名称の清酒であって、容器に充填し冷蔵等特別な貯蔵をした上で販売するものについては、その貯蔵を終了し販売する目的をもって製品化した日を製造時期として取扱う」について、「特定名称の清酒であって」の文言を削除する)について、同組合副会長・木下宏太郎氏から説明があった。

 講演では鍋山氏が、市場環境の激変を振り返った。酒税改正の局面でさえ、大型スーパーとの価格交渉が難航。価格対策が大方を占めた販売施策の転換を迫られ、提案が不可欠な商品政策の強化が課題となった。リスクマネジメントでは、クレーム対応のスタンスを語り、阪神大震災被災時の状況についても詳しく伝えた。

 需要面では、「清酒は上と下ばかりで、真ん中のいいところは抜けて、そこを焼酎に取られた」と指摘。かつての地酒ブームにも触れ、「吟醸酒はボリュームゾーンのユーザーニーズを超え」、日本酒需要層のすそ野を広げることにはつながらなかった。「地方のメーカーには、付加価値のある造り、本物志向や安全に応える環境が整っている。芋焼酎が伸びたのと、同じものをもっている」と奮起を促した。

 業界外から講師に招かれた三嶋氏だが、菓子作りを通じ価値や感動を生む点では、つくり手としての酒造業と共通するものが多い。貫いていることがある。「多店舗化せず、一店舗のみで『自分の作ったものは自分の目の届く範囲で売る』」「鮮度を一番大切にする」。

 第一声は、「どれだけ情熱を傾けて、お酒を造っているのか」という問い。「儲けや利益ばかりを考える社会になってしまったが、生きる道、進むべき道がある」。

 社員には「明るく元気に素直に」の心掛けを求め、愛の鉄拳も振るってきた。27年間の営業で、同氏を師とする27人が独立開業しているが、会社が一つの学び舎のようにも見える。菓子作りに使うブルーベリーなどの栽培地を訪ね遠く足を運ぶ。素材の良し悪しはもとより、つくる人間に会い信じる。だから、「その人と一緒に菓子を作っている」喜びがある。

 菓子業界でも、「お店を満艦飾(まんかんしょく)にしてやれば、だませるし、もうかる」。そんな店もあるが、「損も辛いこともあるが、信じて歩く道があるはずだ」。日本酒の蔵元へ、「昔は良かったと言っていても仕様がない。造るものを一生懸命にアピールする気持ちを込めてやれば、時間はかかっても通用する」と呼びかけた。

  ◇  ◇  ◇

 同支部木下支部長は、研修会冒頭あいさつのなかで、日本酒の動向に触れ、年初に出荷が前年を上回ったものの、「底打ち宣言をするまでには至っていない」と現況を指摘。地方の日本酒蔵の決意表明ともとれる言葉を続けた。

 「各蔵元には、それぞれの造りに対して哲学、こだわりがある。哲学を熱く語り、お客様にファンになっていただく努力を続けることが、日本酒ファンを増やす」「原材料の質を落として安価な清酒を造っても、日本酒本来の味わいを失うし、価格面で合成清酒や他のアルコール類にかなわない」「安心安全の必須条件は、いつ、どこで、だれが、どのように造ったのかが分かる生産経歴に加え、“どんな思いで造ったのか”が重要。それが伝われば、安いものとの差額のなかに“生産者の良心”があることが分かる」「地酒ならではの特色ある酒を造り、感動させることができれば売れる」「努力の方法をそちらへ切り替えていかねば、生産者の体力は消耗していくばかりだ」。

 「造ることと売ることは車の両輪」であり、「販売店に買っていただいたことは売上げではなく、まだメーカーから販売店様への倉庫間移動の段階」だとも。「おしゃれな飲み方や、格好いい器、おいしい温度帯・お燗の付け方、飲むときのマナー、料理との相性、提供の仕方、造り手のこだわりを伝える方法などのソフトを、メーカーが積極的に情報発信することが必要だ」。

(掲載日:2008年08月07日)

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