【福岡】酒類卸の倉松酒販(北九州市、倉松聰社長)は4月27日、北九州市・小倉のホテルで、小売店や飲食店を対象とした「夏の生酒プロ部門試飲会」を開催した。日本名門酒会の北九州支部卸として催したもので、生酒をメインに名門酒会ブランドや同社の特約ブランド、計45アイテムの清酒をアピール。日本酒の現況をテーマに、萱島酒造(日本酒「西の関」醸造元、大分県国東市)・萱島進社長の講演もあった。
今夏の商材を目利きするクローズな会で、約40人が参加。名門酒会推奨酒はもとより、倉松酒販が揃えた地元福岡県産酒7銘柄を含む14アイテムの“お勧め”にも関心が高かった。
講演の萱島酒造は、吟醸酒市販の先駆。地酒ブーム火付けのブランドでもあり、いまだ地元での愛飲が根強い“地の酒”のポジションを維持している。最近では値上げを先行発表し、決断を示した。
萱島社長は、若者ばかりをターゲットにする業界の見方を変えてみるためのヒントとして、「世帯主の年齢階級別・1世帯あたり年間酒類消費支出金額」のデータなども示した。清酒への支出は29歳以下が約2300円、30代2900円、40代4500円、50代8000円。50代の支出が多く、発想の転換も促した。
いまの日本酒の品質について、「非常に高いが、似ている。地産地消が言われているが、各地方の味があるのかどうか。平均的では、装置産業に負ける」と語り、地方酒独特の個性を失わないことが重要との考え。香りが高すぎて違和感があり、食中酒に向かない酒質への異論も呈した。
自社のスタンスは、「地元のお客さんを裏切らないこと」と明快。元々甘口の酒造りを得意分野とし、いまも「大分の甘口の醤油に合う」甘口(かつては日本酒度でマイナス6ぐらい。いまもマイナス2~3)を貫く。
自身を戒めるように、また小売店へのアドバイスともなる、著名人の言葉も送った。「私の腕は2流だが、お客さんを見切って、お客さんが喜んでくれる料理をつくる。同業者から邪道と言われても、そうしてきた」。
いま一人、スポーツマンの言葉。「プロの基本は、プロとしての心構え、技術、ファンサービス。ユニフォームを着ている時間は、いかにも短い。脱いだあとに何をするのか」。
家事から解放されない女性を思い、「女性に安息の場を提供できないか。華やかなパーティーのような場をつくれないか」と問いかけも。日本酒の果たす役割は少なくなく、酒会がそうした場になる可能性も示唆した。
「日本酒の未来を悲観的には見ていない」とも。「酒造りにコストをかけているから、きっと分かっていただける」。それに、「地域性の発揮は地方蔵にこそできる」。海外の日本酒ブームを、「ばか売れはしていないが、ばか高く売られている」と評すとともに、ブーメラン現象で日本での需要喚起につながればと期待を寄せた。
もとより、「特効薬はなく即効性もない。ただコツコツやっていくしかない。(消費者が)日本酒へと振り向いてくれたときに、『美味い日本酒があった』となるかどうか」。そのために、「一番広い層に、一番飲んでいただいている普通酒のレベルを上げる。質をきちっとしなければと、そういう生き様でやっている」。
値上げについては、コスト高が経営的に耐えうる一線を越えている状況をあらためて示した。
会を主催した倉松酒販倉松社長は、「低迷の日本酒業界のなかで、蔵元さんがいかに頑張っているのかを知り、そのことを、われわれが一緒に一所懸命に走っていく決意としたい」と話す。