日本洋酒酒造組合理事長が会見 洋酒の価値訴求が重要

 佐治信忠・日本洋酒酒造組合理事長は12月7日、年末恒例の記者会見を行い、平成19年の洋酒業界の回顧と平成20年の展望などについて“1”今後とも国産洋酒の「価値訴求」に一層の注力が必要で、特にウイスキーは高付加価値の提案が大事だ“2”洋酒業界は缶チューハイなどの市場が安定化しているが、業界の発展のためには各企業が「適正な利益確保」に向けた努力が必要だ“3”洋酒業界もコストアップに悩まされており、これへの対応が求められているが、値上げに踏み切らざるを得ない場合も考えられる--と述べた。

 (1)平成19年の国産洋酒業界の回顧について

 経済環境の激変の中で、個人消費も全般的にいまひとつ盛り上がりを欠く状況だが、価値ある商品にはお金を払うことをいとわない、という消費トレンドは変わらず、魅力ある商品は話題を集めている。しかし、酒類業界、特に洋酒業界は原材料費を中心としたコストアップ、ユーロを中心とした円安の影響、コストダウンへの取り組みの必要性、少子高齢化の波や若者を中心としたライフスタイルの多様化など、さまざまな環境の変化が多く、厳しい状況が続いている。

 今年の洋酒業界では低アルコールカテゴリーの中で、消費者ニーズに対応した新機軸の商品が市場投入されて、洋酒類の出荷数量の増加に寄与し、梅酒や甘味果実酒が伸長している。一方、ウイスキーなどのハードリカーは、なお厳しい状況に置かれているものの、ブランド力のあるプレミアム商品の伸長などで、洋酒業界全体としては前年を20%ほど上回っている。

 個々の洋酒類の状況は次のとおり。

 <ウイスキー>=前年を5%程度下回ったがシングルモルトウイスキーが好調で、毎年10%伸びていて、スタンダードウイスキーは徐々に下げ止まりの手ごたえを感じている。国際的な酒類コンペティションにおいて、わが国のウイスキーが次々と高い評価を得ており、経済成長が著しいアジア、ロシアなどでもジャパニーズウイスキーの需要が伸長している。国内はもちろん、世界の消費者に“ジャパニーズウイスキー”の魅力や価値を届ける企業活動になお一層努力していくべきだ。最近、世界に日本食が広まり、繊細な味が評価されているが、それと同時に日本のウイスキーの繊細な味が評価されているので、世界に広めていきたい。

 <甘味果実酒>=野菜素材を使用した新しい価値観を持った酒が話題になるなどで、前年の約2倍と大きく拡大した。

 <スピリッツ>=ジンは前年並み。ウオツカは5%程度前年を割ったものの、低カロリーの缶入りチューハイ商品が好調に推移した結果、前年を15%程度上回った。

 <リキュール>=トータルで前年を20%以上上回った。中でも梅酒(非発泡性)は家庭で気楽に楽しめる紙パックが大きな伸長を示し、業務用市場でも消費が拡大し、素材や製法にこだわった梅酒の多様化も見られ、前年比1割伸長している。また、今年度は新機軸の低アルコール飲料やビール系新ジャンル酒類が続々と新たに発売されて、リキュールのカクテル・チューハイ分野における増加分に大きく寄与し、前年を2割強上回った。

 (2)現在の酒類消費動向への対応について

 少子高齢化の波に加え、若者を中心としたライフスタイルの多様化が業界全体に大きな影響を与えている。一方、30代以上ではシングルモルトウイスキーの伸長が示すように、日常生活の中で大切な時間を過ごすために、上質なお酒を楽しむ消費者も多い。ウイスキーやリキュールをはじめ洋酒は11:27 2007/12/21酒の中でもとりわけ嗜好性の高い。長い時間を経ても世代を越えて愛され続ける嗜好品として、人から人へと受け継がれていくブランドを育てる造り手の努力が、なお一層必要とされる。

 (3)缶チューハイなどの市場正常化への取り組みについて

 缶チューハイ市場の低価格競争は改善され、市場は安定化しつつある。酒類業界の健全な発展に向けて、公正なルールの運用と自由競争を基本とする中で、各社が「適正な利益の確保」に向けた努力をさらに継続する必要がある。各企業が適正な利益の確保を真剣に考えないと、業界は衰退してしまう。

 (4)洋酒業界の値上げの動きについて

 世界的な原油高は平成19年度の日本経済に大きな打撃を与え、各業界ともその対応に追われる一年。しばらくこの状況は脱し得ないとみており、来年度は原油高の影響だけでなく、異常気象による原材料のコストアップなどへの対応も今年以上に求められると思われる。消費者に「安心」「安全」そして「安定」への信頼をお届けするため、各社とも、まずは最大限の企業努力として、するべきことをしていく姿勢で臨んでいく所存だ。しかし、値上げに踏み切らざるを得ない状況も十分考えられる。

 (5)平成20年の国産洋酒の展望と組合の当面の課題について

 平成20年度も酒類を取り巻く環境は引き続き厳しいものとみており、さらなるコストアップへの対応や、若者の酒離れ現象に歯止めをかける打ち手など、火急の課題が多い年となる。そうした中、洋酒ならではの、洋酒だからこそ体験してもらえる楽しみの世界や時間を消費者に提案していく価値訴求活動が、より求められる年となる。そのためにメーカーの原点ともいうべきR&Dに、より一層取り組み、高付加価値商品を造りだしていくことで、新たな需要創造を推進し、確かな洋酒市場の成長を実現していく年にしていきたい、と考えている。

(掲載日:2007年12月21日)

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