焼酎粕を原料にマルチ開発

 【鹿児島】土に還る“マルチ”(農業用生分解性マルチシート)を、焼酎粕からつくる。その実用に向けた甘藷(サツマイモ)の検証栽培が3月28日、南さつま市金峰町で始まった。

 いまの時期、畝(うね)を包むように、畑に帯状に見えるのがマルチシートだ。芋焼酎の原料となる甘藷のほか、野菜類の栽培において保温・除草効果がある農業用フィルムで、黒や透明。通常使われる石油系ポリマルチは、土には還らず、収穫期には甚大な労力を要す元になる。甘藷収穫の場合、掘り取りは機械化が進んでいるが、残ったマルチの除去には人手を要し、特に雨天収穫は困難を極めるという。

 焼酎粕を原料の一部に使ったマルチ「イモ太郎」を開発したのは、焼酎粕をシート化する特許技術をもつ東京のベンチャー企業、(株)ピースウェイブ(豊島区、加藤憲一社長)。今回の実証栽培は、同社の相談を受けた小正醸造(本格焼酎「さつま小鶴」醸造元、製造場・日置市、小正芳史社長)が、同社市販酒の原料甘藷供給元でもある(有)東馬場農場(金峰町)代表の東馬場伸さんに橋渡しし実現した。

 イモ太郎の原料は生分解性樹脂(60~70%)、焼酎粕の乾燥固形物(20~30%)、その他(10%)。生分解性樹脂は使用後、微生物によって二酸化炭素と水に分解されるもので、土に還るマルチとしてはすでに、コーンマルチ(澱粉系生分解性マルチフィルム)などが実用化されている。

 微生物の力で分解されるものだけに、有機栽培、もしくはそれに近い形で作物を育てる畑でなければ、土には還らない。今回、実証栽培にあたる東馬場さんは“土作り百姓”を自負。有機栽培の先駆で、その実績は天皇杯受賞や黄綬褒章受章で認められている。現在、焼酎原料用・黄金千貫を主体にサツマイモの栽培面積は13haから15ha程度。栽培においては大半をコーンマルチ使用に切り替えている。

 今回開発されたマルチは、焼酎粕を混ぜることでコスト低減を実現。粕に含まれる繊維質によって“引張り強度”も増すという。価格は石油系ポリマルチを1とすると、コーンマルチが3、イモ太郎では2となる。厚さはコーンが0・018mmに対し、イモ太郎0・025mm。当日、機械を使ってのマルチ張りでは、「コーンマルチより張りやすい」(東馬場さん)と使用の感触は上々。厚い分、栽培初期に求められる保温効果に問題はなく、あとは土に完全還元するというハードルをクリアできるかどうかにかかっているとの見方だ。実証栽培は分解速度が異なる2種(3カ月と3カ月超)のイモ太郎を使って、約20aの畑で実施。最重要課題の検証に臨む。

 「鹿児島県のポリマルチ使用量は年間3800t。焼酎粕1000tで、すべて生分解性マルチに転換可能で、価格も下がる。ぜひ県民運動にしたい」。ピースウェイブは焼酎粕を有効活用することで、生分解性マルチの普及促進を図り、地域資源の循環にもつなげたいとの考えだ。粕を利用した生分解性マルチが全国へと普及すれば、粕の有効活用量も増えることになる。さらには、焼酎粕はバイオマスプラスチックの原材料にもなることから、活用への期待は一層膨らむ。

 土に還るマルチは農家の省力化に貢献する一方、焼酎メーカーにとっては企業イメージのアップにつながる。今春以降、焼酎粕の海洋投入ゼロ方針を打ち出している小正醸造・田中晋作営業統括部長は「農家が助かることはもちろん、農家から原料をもらい、(マルチとして)焼酎粕が農家に還元され土に還る、そんな地域循環型の農業になれば理想だ」と、“粕・マルチ”へ大きな期待を寄せる。

  ◇  ◇  ◇

 今年4月から海洋投入が原則禁止(環境省許可で5年の猶予)される焼酎粕。鹿児島県では平成17酒造年度(17年7月-18年6月)、約48万1000tの粕を排出、うち15万9000t(総排出の33%)を海洋投入している。

(掲載日:2007年04月09日)

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