国税庁鑑定企画官室はこのほど、平成17酒造年度(17年7月~18年6月)の酒類製造概況を発表した。これは、今年5月末までにとりまとめた全国の清酒、本格焼酎・泡盛、果実酒、地ビールの製造状況を明らかにしたもの。特に、清酒の製造状況は「前酒造年度とほぼ同数の製造場が清酒を生産し、製成清酒は総じて高レベルで、純米酒に力を入れる製造場が多くなっていることと、全体的に特定名称酒の製造比率が上昇している」との傾向が示されている。
【清酒】(1)概況=近年、廃業または休造による実製造場数の減少が続いていたが、今酒造年度は前酒造年度とほぼ同数の製造場が清酒の製造を行った。一部の地域では、地理的表示に関する表示基準による清酒の産地指定を受けるなど、地域ブランドの確立への動きが活発になっている。また、蔵見学や仕込み体験などの消費者参加型のイベント開催や、嗜好の多様化に合わせた個性的な清酒の販売など、各地域で様々な活動を意欲的に行う製造場が見られた。
(2)気象条件=12月から1月上旬にかけて全国的に厳しい寒波に見舞われ、一部で醪日数が延びるなどの影響を受けたものの、酒造最盛期の1月中旬から2月にかけては寒気が安定し、酒造に適した気象条件となった。
(3)原料の状況=原料米は、昨年のように台風の被害を受けることもなく良好だった。水稲の作付け品種が一部の高食味米に集中する傾向が続いているため、一部で酒造に適した一般米と酒造好適米の希望数量を確保できない例が見られた。各地で地元産の酒造好適米の使用が増加する傾向が続いている。
(4)造り等の傾向=強い寒波の影響を受けた地域では、醪日数が延び、昨年に比べて淡麗な酒質となった例も見られたが、概ね酒造に適した冷涼な気候だったため、製成酒は総じてレベルの高いものとなった。特定名称清酒は、昨年同様本醸造酒が減少する傾向にあるが、純米酒に力を入れる製造場が多くなっており、全体としては特定名称清酒の製造比率が上がっている。低アルコール清酒は、様々なタイプのものが開発されているが、消費動向に影響を与えるまでには至っておらず、昨年度と同様の状況。酒粕は、昨年同様取引状況は順調で、価格も品薄感から上昇傾向が続いている。
(5)労務状況等=酒造従業員は、季節雇用の熟練工の減少が続き、地元の従業員を雇用したり、経営者およびその子弟が製造に直接従事したりする製造場数が年々増えている。そうした製造者でも従業員教育が進み、酒造技術は着実に向上している。また、女性の雇用が増加する傾向にある。
【本格焼酎・泡盛】東京局、福岡局、熊本局および沖縄事務所管内の稼働製造場は前酒造年度より増加したが、製造数量はわずかながら減少する見込み。原料別では、甘藷および黒糖製の伸びは続いているが、他の原料は減少している。
依然、焼酎市場の好調が続くなかで、清酒と焼酎の両方の免許を持つ製造者が焼酎の製造に力を入れる例や、これまで多くを未納税移入に頼っていた製造者が自社製造に力を入れ始めるといった例が見られた。また、規制緩和で地域特産原料による製造免許の取得が可能になったことから、新規に焼酎製造に参入する製造場も出てきている。
原料の入荷状況は、米、麦、そばおよび黒糖は数量も十分確保でき順調だった。甘藷は一部不足気味の地域もあったが、大きな支障はなく、価格も安定していた。清酒粕は希望数量を確保できないところがあり、価格も大幅に上昇した。
醸造状況は、概ね順調で問題ないが、製造規模の拡大や製造期間の延長に、設備の能力が追いつかず、苦労する製造場が見られた。
酒質は例年同様良好だが、麦焼酎では常圧蒸留を生かした酒質に変えていこうとする傾向が、米焼酎では樽貯蔵を主体とする貯蔵酒の取り組みが見られる。黒糖焼酎や甘藷焼酎は全体的にはきれいな酒質への流れが続いている。
酒造従業員は、女性の雇用が増加する傾向にあり、女性中心で製造を行っている製造場も見られた。
【果実酒】製造数量は前酒造年度並みの地域もあるが、全体としてはやや減少傾向。気象条件には概ね恵まれ、糖度が高く品質の良い原料ぶどうが収穫された一方で、地域および収穫時期によって遅霜や病気の発生、日本海側を中心とした記録的な豪雪によるぶどう樹の被害もあった。
製成酒は、品質の良い原料ぶどうを使用したことで、例年以上に原料特性が発揮され、全体的に良好なものが製造された。また、甲州種の新しい栽培方法が開発され、特徴のある香りを持つ果実酒の製造に取り組む製造場が見られた。
【地ビール等】地ビールおよび地発泡酒の製造場数は減少している。製造数量も、前酒造年度より増加している製造場も一部には見られるものの、減少している製造場が多く、引き続き厳しい状況となっている。このような状況に対し、独創的な製品の開発や新規市場の開拓などに積極的に取り組む製造場が見られた。