酒米ハンドブック改訂版 151品種を写真で紹介

2017年07月19日

 2011年発行同書も日本酒ファンを魅了するものだった。酒米はすべて写真で紹介され、その姿が愛おしいとの声が聞かれた。その改訂版。酒造好適米を中心に、日本酒造りに使われる151品種を写真で紹介するポケット図鑑。2010年以降に登場した14品種を新たに追加。近年高まる「県独自の酒米」開発も見て取れる。

 各品種ごとに祖父母の代にまでさかのぼる系譜図を併載。品種索引があり「系譜図で知った両親・祖父母の品種を調べれば、いとこやはとこ等にあたる品種を調べることもできる」。各酒米の基本データとして千粒重や育成年・育成者、生産地を記載。育成への物語や命名由来、栽培上の耐性や収量など品種特性にも触れる。▽酒米とは▽早生(わせ)晩生(おくて)▽雄町の正体▽品種改良の方法▽温湯除雄法▽麹づくり▽麹米・酒母米・掛米▽米ぬかの行方▽もち4段仕込み▽もち米のお酒▽西日本にあった大粒品種群▽イネの芒(のぎ)は何の役に立つのか--等のコラムも興味深い。欄外にはその酒米で醸した日本酒を飲んだ感想などコメントも。酒米に関する用語解説や「品種開発年表」も付した。

 新品種では熊本県初のオリジナル酒造好適米「華錦(はなにしき)」なども掲載されている。著者の副島顕子さん(そえじま・あきこ)は熊本大学大学院「先端科学研究部」教授。専門は植物系統分類学。国内外で植物採集を行い、分子生物学的な研究を行っている。

 日本酒愛飲家で知られ、2014年11月、酒に関する文化史・民族史を探求する「酒史学会」が九州初、熊本で開催された際には大会実行委員長を務めた。飲み手の立場から伝えたい想いが滲む。「流行りのお酒を名前だけで選ぶのではなく、自分が好きなのはどんな味なのか、味が違うのは何故なのかを考えて選ぶ人が増えているようです。酒米はお酒についての重要な情報のひとつです。酒米の背景に想いを馳せることもお酒を飲む楽しみのひとつだと思います。この本がそんなちょっとした楽しみに役立ってくれれば嬉しい」。

 ▽初版第1刷発行=2017年7月31日▽新書判104ページ▽本体1400円+消費税▽発行元=㈱文一総合出版(〒162-0812 東京都新宿区西五軒町2-5、編集部TEL/03-3235-7341)