キリンビール 「陸」「富士」の育成加速

2023年03月27日

 キリンビールは3月13日、「国産ウイスキー戦略発表会」を開いた。

 ウイスキー市場は、ステータスシンボルのお酒として1970年代以降、市場が拡大し、1983年にピークとなったが、経済成長の鈍化と円高、関税の低下、酒税改定や級別廃止によるプレミアム価値の崩壊などにより徐々に衰退した。2009年にはハイボールブームが再来し、2014年にはNHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の影響で国産ウイスキーの人気は急速に高まった。

 しかし、国産ウイスキーは原酒不足が顕在化し、2016年以降、一部商品の価格改定や終売が増加。一方で、2021年にはジャパニーズウイスキーの定義が明確化されたことから、国内外で注目を集めるようになっている。

 同社・堀口英樹社長は、「当社のウイスキー事業は、10年先のキリンビールを支える事業として位置付けており、昨年の国産ウイスキーの販売実績は前年比57%増となる約40億円となった。富士御殿場蒸溜所は、ウイスキー造りに理想な環境下でモルト、グレーンウイスキー両方を製造し、仕込からボトリングまでを行うという、世界でも稀有な蒸溜所で、特に3つの蒸留器から生まれるグレーンウイスキーは世界で高い評価を得ている。また、約80億円の投資を行った生産設備が2021年から稼働し、保管能力も約2割増強され、小型発酵タンクを4基、蒸留器を2系列導入した。現在でも販売面で制約があるのは事実だが、80億円の投資効果が出てくるのは2025年くらいからになるだろう。富士御殿場蒸溜所ウイスキーを通じてウイスキー市場の魅力化と活性化を目指していく。2023年は、50年間の感謝をブランドを通じて消費者へ伝え、次の50年に向けて富士御殿場蒸溜所のウイスキー『陸』『富士』のブランド育成を加速させる。また、『富士』については、好調な海外展開をさらに加速させていく」と述べた。

 2023年の「キリンウイスキー陸」は、中味特長はそのままに、パッケージに富士御殿場蒸溜所のロゴを新たに搭載し、50年前から富士の麓で追い求めてきた理想のウイスキーであることを新しい広告とともに昨年を上回る規模で実施し、おいしさを実際に体験してもらう飲用体験機会も最大化する。

 「ジャパニーズウイスキー富士」は、富士御殿場蒸溜所のフラッグシップブランドとして、「シングルモルトを発売する。「シングルモルトジャパニーズウイスキー・富士」は5月16日から通年で、「シングルモルトジャパニーズウイスキー・富士 50th Anniversary Edition」を5月23日から数量限定でそれぞれ発売する。