国税庁 「酒類産業の現状と今後のあり方」提唱、量から質への競争転換を

2005年02月22日

 国税庁はこのほど、「酒類産業の現状と今後のあり方」という提言をまとめ、酒類業界に提示したようだ。これは、酒類業者をめぐる経営環境の変化が激しく、厳しい中での生販三層事業者の経営の現状を踏まえて、今後、酒類製造業界、卸・小売業界、飲食店業界と行政などが経営の健全化・安定化、業界の発展のために取り組むべき主要な対応策と課題を指摘するとともに、酒類業界の将来像を示したものとして注目される。その中で、酒類業者が「数量から質への競争の転換」を促し、▽酒類生産者は高品質・付加価値の高い酒類の製造を▽卸売業者は卸売機能の向上による適正利潤の確保を▽酒類小売業者は多様な顧客サービスの提供などによる経営の差別化と酒類に対する社会的要請への的確な対応を--を求めている。
 国税庁が酒類業界へ提唱したとみられる「酒類産業の現状と今後のあり方」の要旨は次のとおり。
 (1)酒類業界を取り巻く外部環境要因の変化は、「社会環境、社会情勢の変化」では少子高齢化、食生活の変化、生活様式の変化、健康・安全性の指向の高まりがみられ、「経済情勢の変化」では規制緩和の進行、デフレ化や賃金・所得の伸び悩み、国際化の進展などだ。そういった中で酒類業界の現状は、▽酒類製造業界では、低コスト・低価格酒類の増加などで品質基準の確保などの問題があり、業界構造や経営戦略上の諸問題として、零細・ぜい弱な生産者の存在、過剰生産・供給、過度の競争がみられる▽酒類卸売業界では、卸マージンの低下など収益構造の変化が大きく、機能性の低下が問題▽酒類小売業界では、組織小売業の台頭と増加の一方で、一般酒販店の減少が著しく、酒類の取り扱いに不慣れな業者の市場参入がみられる▽飲食店業界では、酒類の不適切な品質管理や商品情報の不足がみられる。
 (2)以上のような酒類業界の現状に対する今後の対応策として、行政、各業界に必要な取り組みとして考えられることは、<酒類製造業者>“1”高付加価値化のための研究や技術指導“2”市販酒の事後チェックの強化“3”適切な情報提供のための表示基準などの検討など品質水準の確保と向上への対応策が必要。酒類生産構造や経営戦略上の諸問題への対応策としては、“イ”過剰設備の解消“ロ”経営困難な生産者に対する問題点の提起“ハ”公正取引の推進“ニ”清酒などの輸出振興。
 <酒類卸売業者>専門家による研修・提言、リーディングケース・サクセスストーリーの提供などで、これはメーカー、小売店にも必要。
 <酒類小売業者>組織小売業では、自社基準の遵守などによる公正取引の推進が必要。一般酒販店では、サービスの向上、酒販組合の活性化、経営支援措置の充実と利用促進が考えられる。
 酒類業界全体としては、酒類の社会的要請への的確な対応が求められる。
 また、飲食店業界では、安全でおいしい酒の飲み方の提案と啓発活動が大事で、消費者では、消費者サイドに立った酒類の品質チェック・表示の提案、おいしい酒の飲み方についての情報発信、消費者相談窓口の設置の要請がある。
 (3)今後の酒類業界のあるべき将来像は、▽酒類製造業界=高品質・付加価値の高い酒類の生産、適正な経営戦略の構築などで、「量」から「質」への競争の転換が求められる▽卸売業界=卸売機能の発揮による適正マージンの確保とマーケットの育成が望まれる▽小売業界=多様な顧客サービスの提供などによる経営の差別化、酒類の社会的要請への対応が必要▽飲食店業界=安全な酒類の提供、適切な商品情報の提供、酒類の飲み方提案などの情報発信などが望まれる。