本坊酒造・信州ファクトリー ウイスキー蒸溜を再開

2010年11月12日

 本坊酒造(鹿児島市南栄、本坊修社長)は、2011年2月、信州ファクトリー(長野県上伊那郡宮田村)でのウイスキー蒸留再開を決定した。

 同社は、1949年、鹿児島にてウイスキー製造免許を取得。1960年、国産ウイスキー創生の一翼を担った岩井喜一郎氏の設計・指導のもと、“竹鶴レポート”を参考に山梨工場(現・山梨マルスワイナリー)で、ウイスキー蒸留設備を竣工、モルトの蒸留と貯蔵を行い「マルスウイスキー」のブランド名で販売を開始している。1985年には「日本の風土を活かした本物のウイスキー造り」を目指し、さらなる理想の地を求め、中央アルプス山麓にある長野県上伊那郡宮田村に、信州工場(現・信州ファクトリー)を竣工(蒸留器など設備を移設)、正統スコッチウイスキーを超えるべく、原点に忠実に、本物のウイスキー造りに情熱を注いできた。2007年には、シングルカスク・ウイスキーが、イギリス・ロンドンで開催されるIWSC(International Wine and Spirits  Competition)で銀賞を受賞したのをはじめ、国内外で評価され現在に至っている。

 しかし、年間製造数量で約900klあった同社においても、1989年の酒税法などの改正、従価税および級別制廃止以降、ウイスキー需要が長らく低迷していく中で、1992年を最後にモルトの蒸留については休止を余儀なくされていた。

 岩井氏設計の蒸留器が稼働して半世紀余り、これまでも国産ウイスキー誕生前まで遡る歴史的系譜とこれら生み出されたモルト原酒を所有している背景から、再稼働させることを検討してきたが、ウイスキー需要が回復傾向にある昨今、伝統ある蒸留器から将来にわたって安定したモルト原酒を供給すべく蒸留再開を決定した。

 信州ファクトリーでは、すでに蒸留器をはじめ、ウイスキー設備について点検、整備をはじめており年内中に完了、2011年2月からウイスキーモルト原酒の蒸留を再開すべく準備を進めている。2011年2月以降、ウイスキーモルト原酒の蒸留を再開、樽貯蔵を行い、長期にわたり保有するモルト原酒に加えて、将来にわたり安定したモルト原酒を供給する体制を整え、国産ウイスキーの一翼を担うべく取り組んでいく。

 【信州ファクトリー施設概要(主たる設備のみ)】▽原酒製造設備=麦芽粉砕機(0・5t/H)、糖化機、発酵タンク7kl5本▽蒸留器=山梨工場より移設、昭和35年、岩井喜一郎氏設計の下に製作▽ストレートヘッド初留用6kl/回▽ストレートヘッド再留用=8kl/回