全国きき酒選手権大会優勝 土佐鶴酒造の久武宣興氏 喜びを語る

2007年08月28日

 【高知】四国最大手の清酒メーカー土佐鶴酒造(安芸郡安田町、廣松久穣社長)で製造部製造課課長代理を務める久武宣興(のりおき)さん(34)が7月12日に東京で開かれた日本酒造青年協議会主催の第31回「全国きき酒選手権大会」に出場し、満点で通算2度目の優勝を飾った。純米酒11点のマッチング方式で、全国22府県の若手酒造技術者38人が参加。久武さんは「会社の名前を背負っているので、優勝出来てうれしい」と喜びを語る。

 全国新酒鑑評会「金賞通算34回」で高品質に定評がある同社は、久武さんほか田村隆夫氏が3回、廣松社長の子息で専務の慶久氏が昨年初と驚異的な優勝回数を誇る。毎年、四国勢が強い大会だが、「県・四国が競技の最初からグラスに酒が入っているのに対して全国は自ら注がなければいけない。ペース配分で焦ると勝てない」と難易度の高さで知られる。

 同社が卓越した利き酒能力を発揮する理由は、官能検査で品質チェックに力を入れる現場にある。競技のための利き酒はしないが、妥協を許さない姿勢で製品の品質を追求。社内では瓶詰め時はもちろん、在庫分も含めた品質チェックが毎日1時間以上にものぼる。

 入念なチェックは製品にとどまらず、仕込み水にも及ぶ。「いろいろ比較することで良い酒かどうかの判断基準が出来る」と久武さん。品質が良くない酒は決して販売しないという同社のポリシーが品質に対する目利きを向上させる。

 利き酒上達のコツは、まず色を見て次に香りに欠点があるかどうかを探ることだという。好みにもよるが、久武さんは「個人的にもフレッシュな感じが好きで、老香は良くないと思う」と専門的な立場から良質の酒がどうあるべきかを常に見つめている。

 昭和47年10月、高知市長浜出身。明大農学部農芸化学科で水耕栽培を学び、平成7年に入社。担当する部署は主に原酒の配合で、大規模な貯蔵タンクがある北大野工場の2つの蔵と本社工場を行き来しながら、製品の企画や研究にも携わる。「配合比率は社内で十分検討し、常に一定の品質を心がける」と重要なポストを担う。

 「日本酒は旨い」。大学時代、ゼミの教授が愛飲家だった縁で、酒の世界に魅了された。「嗜好品だが、全てのヒトに『おいしい』と感じてもらえる酒造りを続けたい」と久武さん。厳しい清酒業界を盛り返すため「様々な酒も飲むが、メインはあくまで日本酒」。長身で優しい笑みの中に力強い決意がのぞいた。