日本焼酎学会 地域が育む芋焼酎、出版記念で初のシンポ

2005年05月02日

 【福岡】地域文化の視点から本格焼酎を掘り下げるシンポジウム“本物の焼酎を求めて・本格焼酎と地域文化”が4月23日、田川市の福岡県立大学であった。主催したのは焼酎文化の研究を目的に5年前に発足した「日本焼酎学会」(豊田謙二会長=同大人間社会学部教授)。シンポジウムは、豊田会長が同月、研究内容をまとめた書籍「南のくにの焼酎文化」(発行・高城書房=鹿児島市)を出版したことを記念し、初めて催した。シンポジウムでは、豊田会長の基調講演後、芋焼酎に深くかかわる3氏(小正醸造・佐藤哲郎研究開発部長、九州沖縄農業研究センターさつまいも育種研究室・甲斐由美主任研究官、本窯長太郎焼窯元・有山長佑代表)を交え、ディスカッションを展開。地域とのつながりが強固な焼酎の文化的価値を検証した。
 豊田会長は冒頭、酒税の世界情勢を説明したが、そのなかで食後に楽しむ蒸留酒が高税率であるのに対し、食中に楽しむ、暮らしと密接な関係にある“食卓酒”、醸造酒の税は抑えられていると指摘した上で、焼酎は“食卓酒”であり、“だれやめ”(晩酌)文化も定着しているとして、地域ではぐくまれた文化性をアピールした。
 佐藤氏は、芋焼酎製造は農産物加工とのスタンスを強調。芋生産農家との連携や、伝統的な手造り仕込みに取り組んでいることなどを説明した。芋焼酎ブームの見通しは、「すでに選別が始まり、ここ数カ月で急激に変化している」との見方。中国産輸入冷凍芋の使用量は、「県内大手メーカーが国産芋に切り替えていることなどで、減少傾向にある」としたが、予想される中国産芋焼酎の輸入には懸念を示した。
 芋の品種改良に携わる甲斐氏は、「品種育成には交配採種から10年以上かかる」とし、その流れを詳細に説明するとともに、ウイルスやセンチュウなどの害虫に強い芋、貯蔵性が高い芋の開発を目指していることも訴えた。機能性に富む芋の大きな可能性にも言及した。
 本窯長太郎焼窯元は、初代長太郎氏が“黒千代香(くろじょか)”を生んだことで知られる。有山氏は、千代香の形状がソロバン玉に似ていることに触れ、桜島と錦江湾に写ったその姿を合わせた形になっているとのエピソードを伝えた。使用後も「千代香は洗わない方がいい」とも。焼酎本来の味を楽しめ、千代香の肌つやも良くなるとアドバイスした。