日本酒造組合中央会が平成28年度税制改正要望書まとめる

2015年09月07日

 日本酒造組合中央会は平成28年度税制改正要望書をまとめた。次年度の改正要望では、日本酒、本格焼酎、泡盛、みりん二種といった「國酒」の酒税の減税を求めたほか、合成清酒、連続式蒸留焼酎の名称をそれぞれ是正するよう求めた。そのほか震災被災製造場に対する酒税軽減措置の延長なども同時に要望した。

 日本酒造組合中央会は、平成28年度税制改正要望を取りまとめ、関係先に提出した。

 28年度の要望事項は、①消費税増税時の「國酒」の酒税の減税②「國酒」の酒税制度の見直し③東日本大震災の被災者などの係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(震災特例法)に基づく被災酒類製造者が移出する清酒などに係る酒税の税率の特例の延長④制度の簡素合理化――の4項目となっている。

 消費税増税時の「國酒」の酒税の減税については、「日本酒、焼酎、泡盛、みりん二種は、わが日本の自然と先人の知恵の結晶であり、麹文化の所産として日本の食文化を形成してきた世界に誇るべき民族の酒すなわち『國酒』であって、長年にわたり国の活動を支える税収の大きな柱として酒税を負担し、わが国の歴史の中において大きな役割を果たしてきた」とした上で、政府が税制の抜本改革法(平成24年)により消費税率の大幅な引き上げを行い、その際、「酒税については類似する酒類間の税負担の公平性の観点も踏まえ、消費税率の引き上げに併せて見直しを行う方向で検討する」としていることから、「酒類には過去の度重なる増税により極めて高額な酒税が課せられ、これに消費税が併課されており、これが国際的に共通する原則であるとしても、今般の消費税率の引き上げは大幅なもの」と指摘し、中小企業集団である日本酒、本格焼酎、泡盛、みりん二種製造業界は、「税負担のさらなる増加が企業経営に与える影響に大きな危惧を抱いている」とした。また、全国各地の歴史と伝統を持った酒造蔵元の存続は、「わが国農業政策の基盤である『米作り』のためはもとより、観光資源などとして地域経済の活性化や多様な地方文化の振興のために不可欠である」とし、「國酒」の酒税については、税制の抜本改革法に基づき、類似する酒類間の税負担の公平性の観点も踏まえて制度の全般的な見直しを行い、特に同じ醸造酒間で原料米のコスト面で不利な状況におかれている日本酒と果実酒との税率格差を改めるなど、税負担の軽減を強く要望した。

 「國酒」の酒税制度の見直しについては、「現行の酒税制度は改善すべき問題を抱えた制度」と指摘し、中小蔵元の負担力に即応した税負担とするなど「國酒」にふさわしい制度上の取り扱いとするよう改善を求めた。

 日本酒については、歴史的に主要な酒類であったことから税収確保のため相対的に重い酒税負担を強いられてきており、「同じ醸造酒であるにもかかわらず果実酒に比し日本酒の税負担がはるかに高いなど、極めて不自然かつ不合理な逆格差が存在している」としたほか、合成清酒との関係について、「米の使用を極端に抑えた混成酒である類似代替製品に対し、『合成清酒』という呼称を今日なお認めるとともに、その税負担は日本酒より低いという、不合理な酒税制度が存続している」とし、類似する酒類間の税負担の公平性の観点から日本酒の酒税負担を大幅に軽減したうえ、酒の文化性を守る観点から歴史的遺物とも言える『合成清酒』の名称変更について速やかな改正を要望した。

 本格焼酎については、「わが国固有の麹文化の所産として、特定の原料から単式蒸留器により造り出された原料由来の特性を持つ蒸留酒『本格焼酎・泡盛』に対して名づけられた」ものの、「明治末期になって外国から導入された連続式蒸留器により造られた蒸留酒、国際基準で言えばスピリッツに該当するものまで『連続式蒸留焼酎』とし、焼酎の名を認めているため、伝統文化の維持・発展や国際的なブランドの確立といった観点から問題や混乱を生じさせている」と指摘し、「連続式蒸留焼酎」または「焼酎甲類」との名称の速やかな是正を要望した。

 みりんについては、「酒類でないまがい物すなわち模造品が『みりん風調味料』『発酵調味料』との名の下に酒税はまったく納めず、表示などの法的ルールも無いまま『料理酒』などの商品名を利用して市場を混乱させており、看過しがたい状況」とし、法規定の制定、濫用を許している酒税法体系上の規定の是正、公正取引法令の厳格な運用について速やかな対応を要望した。

 東日本大震災の被災酒類製造者が移出する清酒などに係る酒税の税率の特例の延長については、酒類の製造場について甚大な被害を受けた中小清酒製造者などについては、酒税の軽減割合を拡充する措置が講じられているが、この拡充措置が平成28年3月31日が期限となっていることから、今後の復興に資するため適用期限の延長を要望した。

 制度の簡素合理化については、酒類製造者は申告、承認、許可などの手続きのほか、原料の購入から製造、販売にいたる記帳などの義務が課せられており、これまで数次にわたる緩和措置が講じられてきたものの、実態に即した弾力的な運用が求められる手続きや酒類製造者の過剰な負担となっているものも見受けられるため、さらなる簡素合理化を要望した。