福島県酒造組合 県産酒の安全性をPR

2012年02月07日

 【東京】福島県酒造組合(新城猪之吉会長)は1月25日、千代田区の有楽町電気ビルで平成23年度産「福島県産新酒発表会」を行うとともに、記者会見を開いて新城会長らが福島県産酒の安全性をアピールした。

 会の冒頭、あいさつに立った新城会長は「原発事故以来、私たちを取り巻く環境は大きく変わってしまった。事故直後は流通からの問い合わせが相次いだため、4月の初旬に3カ所のお酒を検査し、放射能は不検出であるというデータを4月8日に記者発表を行い説明した」と、事故直後の様子を語った。

 震災で蔵元が受けた被害については「福島県で特に被害が大きかった蔵元は4社。うち一社の鈴木酒造店は津波で流されてしまったが、現在、山形県で再建している。双葉町の冨沢酒造店も再建を図り、新たな土地で酒造りを続けていく意向だ。一方で浪江町の上田本家と馬場酒造本店は廃業を余儀なくされてしまった」と報告した。

 県内の蔵元の出荷状況については「4月は苦しい状況だったが、各方面からの応援もあり5月、6月、7月は前年を上回る出荷で推移した。しかし、県産米の放射能汚染の報道が出るたびにボディーブローのように厳しさを増している」と説明。輸出については、「EUは証明書を発行すれば輸出ができる状況。米国は震災2カ月後には輸出が再開した。しかし、アジア方面で輸出量が大きかった中国、台湾、韓国で未だに輸出ができない状況だ」と話した。

 今後の活動については、「これからも常に検査を行い、玄米、井戸水は放射能不検出のものしか酒造りに使用しない」と出荷されるお酒の安全性を強調した。

 続いて説明に立った、渡部謙一副会長は、震災後の放射能被害に対する組合の活動を紹介した。

 福島第一原発事故以後の活動内容は、3月下旬に会津地方、中通り、浜通りの3月11日以前にびん詰めした商品と、それ以降にタンクから摂取した商品を分析し、未検出となったデータを4月8日の記者会見で発表。また、4月22日には各蔵の仕込み水、40検体の分析を行い、6月には福島県による商品の放射能検査が実施され、20社の商品の分析が行われた。さらに8月には第2回目の仕込み水の検査が行われ38検体を分析するなど、これまでの検査では、いずれも放射性物質は〝不検出〟となった。

 10月11日には福島県ハイテクプラザにも精緻な検査機器が導入され、放射能測定業務が開始されているという。

 平成23年度産米については、9月下旬に原料米の放射能測定を開始。9月28日には酒造組合で「放射性セシウム不検出の米だけを仕込みに使う」という方針を決定し、10月上旬から県内各蔵で酒造りを開始している。

 新潟大学農学部で土壌学を専攻し、放射性化学を学び放射能に対する見識が深い、同酒造組合の酒米対策委員長の渡辺康広氏によると、「稲は放射性物質が土壌に多少付着していても、吸いにくいという特徴がある」という。さらに放射性物質のセシウムは土壌中のカリウムと同じ挙動を示すという実験結果が出ていることから、カリウム肥料を土壌中に施肥することで、セシウムを吸わない稲の栽培が23年産米から進められている。24産米についても、科学的な知見を使いながら、全農家に文書を配布し周知を図るとともに、よりセシウムを吸収させない米作りを進めていくことで、安全性を高めていきたい考えを示した。