九州北部卸酒販組合 難しい局面も公正取引実現へ

2023年04月12日

 【福岡】九州北部卸酒販組合(3県〈福岡・佐賀・長崎〉36者、今泉三千俊理事長)は3月24日、福岡市のオリエンタルホテル福岡 博多ステーションで第70回通常総会を開催し、令和5年度予算案(収支3230万3430円)など上程全議案を可決承認した。酒類の公正な取引実現へ向け、今年10月実施の酒税率改正や2024年物流問題への対応も問われることになる。

 令和4年組合員の販売状況(前年比)は、▽ビール=117・4%▽発泡酒=96・6%▽新分野=100・5%▽その他の酒類=94・2%。大方の酒類で値上げが行われ、仮需による上積みなどで需要の復調が見られた。

 今泉理事長は公正取引の実現へ一層の意欲を示した。冒頭、WBCでの侍ジャパンの優勝に触れ「信じられないようなドラマで、この国の経済にもかなりのインパクトを与え、コロナ禍から回復基調のなか社会が明るくなった」と話した。業界動向に転じ指摘した。「コロナ禍から脱しもっと良くならないと。去年は値上げが何とか出来て、一歩を踏み出せた。行政の根っこからの後押しもあり概ねうまくいっている。十分に反映されたかには疑問はあるが、数量ベースで上回ってきており、値上げには非常に効果があった。ややもすると半年ぐらいで腰砕けになってしまう。はねのけていく力が試される」。

 10月の税額変更に係わる局面では、バイイングパワーに屈しない交渉を求めた。令和8年10月にはビール350㎖の税額は、従来の77円から54円にまで下がる。「フランスの18円やドイツの5円とは格差はあるが、随分変わってくると思う」とも話した。物流問題では「重たいお酒を運ぶということでアウトソーシングをしているところでは逃げていく可能性があるし、すぐには価格転嫁できないので経営を圧迫してくる」と言及した。あらためて致酔性・担税物資である酒類の特性を無視する販売を「酒類業界を歪めている」と批判した。「WBC的に言えば、さあ行くぞ」。成し遂げようと訴えた。

 組合活動の一環、県産酒の振興を図るための施策を継続している。福岡県酒造組合と九州北部卸酒販組合との共同企画として実施している「しぼりたて」「ひやおろし」。特約や帳合の枠組みを越え、取引の無かった蔵元の酒類についても商品調達を可能にし、地元消費者の商品選択の幅を広げることで県産酒の需要を高めるのがねらいで、2013年9月「ひやおろし」でスタート。「しぼりたて」と合わせ年2回販売を続けている。今年1月発売しぼりたてで第21弾〈14年「夏焼酎」発売1回含む〉。

 総会に臨席した全国卸売酒販組合中央会・江國清志専務理事が、酒税の税率構造の見直しや物流問題、厚生労働省・飲酒ガイドラインなど「酒類卸売業界を巡る諸問題」について話した。

 令和5年10月から発泡酒の定義が見直され〈ホップ使用を追加(現行の新ジャンルは全て該当)〉、350㎖税額は以下となる。▽ビール=63・35円▽発泡酒・新ジャンル=46・99円▽チューハイ等=28円。令和8年10月以降は▽ビール・発泡酒・新ジャンル=54・25円▽チューハイ等=35円。また5年10月から清酒減税、果実酒増税で、両酒類の税率が同じになる。

 税率改正にあたっては「特に増税分について適正転嫁が成されるべき」。令和2年改正時とは状況が異なる。「(あらゆるものの)値上げが進み、消費者の節約志向が強くなっており、量販店はPB比率を高めている。酒税は消費者が負担するものであり、途中でつまっていくことがないよう当事者間で十分な話し合いが必要だし、行政指導を願いたい」。人手不足が進行しているなかでインボイスへの対応を含め事務が錯綜することが予想されることから「相当作業を前倒ししなければならない」。そのためのメーカーの協力「新価格について予め配慮いただきたい」とした。手持品課税の細部にも言及した。

 物流問題は令和6年4月から「貨物自動車運送業における労働時間等の規制等」に基づき、時間外労働時間の罰則付の上限規制や、自動車運転手の労働時間等の改善のための基準が適用されることで生じる。「モノを届けることが出来るかどうか、血液が循環できるかどうかの問題」と危機感を示し、「生樽の容器の統一と軽量化」など業界側の対応も求めた。

 飲酒ガイドラインはアルコール健康障害対策推進基本計画(第二期令和3年4月~8年3月)において作成するとしているもの。飲酒量をはじめ飲酒形態・年齢・性別・体質等によってどのようなリスクがあるか等を盛るとしており「大きなインパクトがあろう。エビデンスに基づき適正なものがつくられるのが大事」との見解を示した。