薩摩酒造「火の神蒸溜所」 ウイスキー事業に参入

2023年03月28日

 【鹿児島】薩摩酒造(本坊愛一郎社長、本社・枕崎市)がウイスキー事業に参入する。2022年12月にウイスキー製造免許を取得。すでに今年2月からモルトウイスキーの製造を開始している。3月22日、製造現地「薩摩酒造火の神蒸溜所」(枕崎市火之神北町388番地)で竣工記念発表会を開き明らかにした。

 1日当たり麦芽仕込量は1・1t。年間約250日稼働で17万5000ℓのモルトウイスキーを生産する計画。初のシングルモルト「火の神」発売は「2026年内」としている。

 併せ、グレーンウイスキーも製造する。すでに蒸留棟の建設に入っており、今年11月稼働を目指す。

 同社は長期貯蔵麦焼酎「神の河(かんのこ)」の製造に係り貯蔵庫、さらに樽工房(クーパレッジ)まで有する。「同一蒸溜所内でモルトウイスキー、グレーンウイスキーの製造を行い、さらに元々有していた焼酎業界で唯一、樽を自社でメンテナンスする樽工房まで合わせた国内外でも珍しい蒸溜所」となる。

 同社が属する本坊グループでは、本坊酒造(本社・鹿児島市、本坊和人社長)が1949年にウイスキー製造免許を取得。長野県「マルス信州蒸溜所」、鹿児島県「マルス津貫蒸溜所」で高く評価されるウイスキーを製造している。関係会社の熊本県「山鹿蒸溜所」も2021年に製造を開始しており、個性の異なる各蒸溜所の原酒をブレンドし商品化することへの期待も高まっている。

 2024年中にショップやバーを備えた施設もオープン予定で、一般客の見学受入れも始める。

 それら施設まで含めたウイスキー関連事業への投資見込みは「10数億円」としている。

 本坊愛一郎社長は「ジャパニーズウイスキーはその品質が国際的な注目を浴び、需要も伸長している。しかも『火の神蒸溜所』はウイスキー製造に不可欠な広大な貯蔵設備に恵まれ、さらに熟練の樽職人もいる。このような客観的状況と主体的な事情を鑑みて、本土最南端のジャパニーズウイスキー蒸溜所としてウイスキー市場へ参入する決意をした」と話した。〈本紙次号3月31日付け発刊号で詳報予定〉