宝ホールディングス ㈱WAKAZEへ出資

2023年01月26日

 【京都】 宝ホールディングスは、フランス・パリに醸造所を構え、100%フランス産の原材料で仕込んだイノベーティブな清酒等の酒類を製造・販売するスタートアップ企業である株式会社WAKAZEが実施する第三者割当増資の一部を引き受ける形で出資した。なお、同社がスタートアップ企業に出資するのは今回が初めてとなる。

 WAKAZE社は、2016年に日本で創業、2019年にフランス・パリ近郊に醸造所「KURA GRAND PARIS」を設立。日本酒の伝統的な製法を重んじながら、フランスの食文化や流行を取り入れ、現地ニーズに合わせたSAKEづくりを行っている。また、フランスの食文化と調和する多様なSAKEの醸造レシピをベースに、世界各地でSAKEをつくり、デジタルマーケティング等を通じて消費者との接点を増やしながら、文化として定着させることを目指している。

 1月11日には、宝ホールディングスの木村睦代表取締役社長、WAKAZEの稲川琢磨代表取締役社長が出席し、発表記者会見を京都市下京区の京都経済センターで開催した。

 木村社長は出資に至った経緯について、「昨年10月にWAKAZE社の稲川社長と直接会話をし、世界各地でイノベーティブな酒づくり(従来の和酒の領域を拡張する革新的なお酒)を行い、当社にないリソースが多いことに大変感銘を受けた。そして同社のビジョンである『日本酒を世界酒に』という熱い想いに共鳴し、パートナーとして共に取り組んでいく決断をした。世界に和酒、そして日本食の文化を広めるという大きな目標の実現に向けて、WAKAZE社との協業を進めていきたいと考えている。激変する世界と経済情勢の中で、持続的に成長し続けるためには、当社が持つ技術力、品質力、ブランド力を高めることに加え、新たな技術で商品開発や顧客とのコミュニケーション手法などのノウハウを取り入れていくことが大事かと考えている。当社が得意とする伝統的な製法の酒づくり、いわゆるトラディショナルな和酒(日本の酒税法上の規格に合わせたお酒)の領域と、WAKAZE社のイノベーティブな酒づくりの領域を組み合わせることで、世界における和酒の新たな魅力や価値を創造していく」と説明した。

 また今後の取り組みについては、「具体的には、当社グループの海外日本食材ネットワークにおいて、WAKAZE社商品をラインアップに追加し、和酒の販路拡大を図っていく。そして共同で酒づくりに取り組むとともに、デジタルマーケティング手法などを活かして世界への情報発信を強化していく。まずは当社の海外事業を展開する宝酒造インターナショナルグループがアメリカでWAKAZE社商品の製造に協力していく。また国内事業を担う宝酒造でも、アジアを中心とした地域への輸出の拡大に向けて、両者の強みを活かし共同で商品開発を進めていきたい。」と日本の食文化を世界に広げることにつながることを示し、「世界の和酒・日本食市場におけるリーディングカンパニーを目指していく」と語った。

 WAKAZE社の稲川社長は、会社概要について説明を行うとともに、「当社はフランスで、従来の伝統的酒蔵がターゲットとしてきた50~70歳の日本文化を好み伝統を重んじる層ではなく、20~40歳のミレニアル世代のオンラインで物を購入する若い層をターゲットして取り組み、推定600万人の顧客を開拓してきた。オンライン中心のマーケティング戦略を行いながら、商品開発も現地のニーズに合ったものを開発してきた。今後、アメリカと中国でグローバル展開が加速の兆しを見せている。今後フランスで確立したビジネスモデルと開発したレシピで2国で展開したい」と同社の取り組みを説明した。

 今回の宝ホールディングスとの事業提携については、「アメリカ・アジア、そして欧州において、生産と流通の両面で協力をいただく。宝ホールディングスの歴史に裏打ちされた独自の高い技術力とWAKAZE社の常識にとらわれないローカライズした商品開発力を合わせて、イノベーションを生み出し、世界に新しいSAKE消費を生み出し、1000億円のSAKE事業をグローバルで共創したい」と目標を示した。

 【WAKAZE社の概要】▽所在地=山形県鶴岡市播磨字若松51番地1▽代表者=稲川琢磨代表取締役社長▽事業内容=日本酒・SAKEの製造、販売▽主要商品=「THE CLASSIC」(南仏カマルグ米、硬水、ワイン酵母で仕込んだ100%フランス産の純米酒)、「BARREL SAKE―RED WINE―」、「YUZU SAKE」▽設立=2016年1月4日