宮崎県酒造組合 本格焼酎鑑評会 

2017年02月03日

 【宮崎】本格焼酎主産地の一つ、宮崎県の酒造組合が主催する「宮崎の本格焼酎鑑評会」(第41回)が1月24日、宮崎市のニューウェルシティ宮崎であり、県内23社26場から出品された124点に対し、熊本国税局・戎智己鑑定官室長をはじめ県食品開発センター職員、メーカー技師ら13人が官能評価した。賞授与・公表を行わない鑑評会。賞獲得にとらわれず、個性の発揮や新たな酒質実現への挑戦を促すことが目的だ。審査当日・同会場で、脅威的な時短で成績をまとめメーカーへ還元、個別指導にまでつなげる独自運営。出荷量が2年連続で日本一、出荷額も989億円(経産省平成26年「工業統計」=28年3月公表)に上る成長産業へ期待値は高まるばかりだ。
 第41回「宮崎の本格焼酎鑑評会」(主催・宮崎県酒造組合<渡邊眞一郎会長>)の出品対象は、平成28年1月以降に自己の製造場で製造した本格焼酎。県内23社26場から124点の出品があった。原料別では▽芋(黄金千貫)=55▽同(紅系)=23▽麦=34▽米=1▽そば=10▽くり=1。審査にあたり出品酒を原料や蒸留法(常圧・減圧)、イオン交換樹脂処理の有無で区分。4点法及び香味に関する22項目で評価した。

 戎智己審査長(熊本国税局鑑定官室長)は講評前、昨年の局主催鑑評会の製造技術研究会・表彰式が熊本地震で中止になったことを詫び、本年は開催予定の旨伝えた。

 出品酒に対し、芋コガネセンガン・常圧焼酎については「仕込みで問題があったと思われる酒は無く、技術力が高い。気になったのはガス臭や末ダレ臭。また酸化臭系の香りは大きく変化するのでこれからお酒を悪くしないよう注意いただきたい。原料由来香では未熟な早掘り芋を使ったと思われる香りがあった。豊作の時でもしっかりした品質の熟成した芋を使うことが重要」とした。同・減圧焼酎は「品質の良いもの、味がしっかりしたもの、飲んで美味しいものが増えている」とした。芋紅系(コガネ以外)・常圧焼酎は「原料芋がすぐに分かるようなものが多かった。芋の特徴をしっかり引き出している」と多様な酒質を認めた。

 麦・常圧焼酎には課題。「全体的な特徴として香りがおとなしく、例えば大分県の麦焼酎との差別化を考えると、何を特徴とするのか」。そば焼酎は「特に減圧のものでは原料特性が出ているもの、香りを少し抑え味のきれいさ、なめらかさを持ったものが見られた」と評価した。

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 同県の本格焼酎出荷量は2年連続(平成26・27酒造年度)全国1位。酒造組合員中、焼酎製造は37者で27酒造年度の単式蒸留焼酎課税移出数量は13万5141kl(=約74万9千石、前年度比4・3%増、日本酒造組合中央会調べ)。県産芋焼酎は原料別全国シェアで52%、そば焼酎は71%を占める。

 経産省平成26年「工業統計」(28年3月公表)による「都道府県別の出荷金額1~3品目」で宮崎県の1位は「焼ちゅう」989億円。17~25年、過去9年連続1位となっている。さらに出荷量の87・6%が県外向けで「県外貨獲得」の基幹産業へと成長している。 

 税収への貢献も多大だ。平成27事務年度の同県本格焼酎酒税額は317億円。法人税申告税額255億円(2万300社)を上回り、再配分される地方交付税額は158億円に及ぶと推定されている。

 審査の視察に訪れた河野俊嗣・宮崎県知事は「今や本県を代表するリード産業。焼酎産業にとどまらず農業・飲食・観光など幅広く本県経済を支え、外貨を稼ぎ税収にも貢献いただき有難い」と称えた。一層の品質向上を望むとともに、連携を深め内外での拡販を後押しすると約束した。2月10日には東京でPRイベント「焼酎ノンジョルノ」を開催、同月13日からは渡米しアピールする。

 渡邊会長は「3年連続日本一を目指し、予想では今年もなりそうだ。ただすべての蔵の数字が上がっているわけではない。ぜひ全国の皆さんが宮崎県の焼酎が全国一だと意識されている間に、各蔵が一層技術力、マーケティング力を向上させ、全部の蔵が前年対比プラスになるよう頑張っていただきたい」と話した。

 関連情報として台湾への輸出規制が緩和されると伝えた。中央会が長年、台湾当局と折衝し実現したもの。芋焼酎のメタノール規制値が1l当たり1000㎎だったものが、倍の2000㎎になり「これを機に台湾への輸出を検討してみては」と提案した。