「オリーブ酵母」 新酒発表会で4社製品

2023年02月01日

 【中四国=香川】香川県酒造組合(高松市、川人裕一郎会長、組合員6者)は1月23日(月)、令和4酒造年度「さぬきオリーブ酵母新酒発表会」をリーガホテルゼスト高松(同市)で開き、参加4社の製品を報道陣に紹介した。オリーブから採取した酵母で造られた清酒・日本酒で、ビタミンCなどと並び日本の家庭でも一般化しているオリーブ油など抗酸化作用のポリフェノールを中心に健康ボタニカル系のイメージをもつ新たなマーケット構築に向けて国内と世界の需要成長が大きく注目・期待される。(同酒とあう料理レシピの審査会など既報)

 同県の情報などによると、オリーブオイル伝来の歴史は安土桃山まで遡るが、江戸時代を経て明治後半に輸入の苗木栽培に成功したのが香川県・小豆島だけだったという。同県の生産量は、国内9割前後とダントツのトップシェアを誇り、昭和の自由化で栽培は縮小するものの、現在はイタリア料理や国産人気で再び脚光。他県も栽培するが、歴史的に研究の積み重ねで香川県は生産する地区を拡大させるなど他県を圧倒する。

 オリーブ酵母の日本酒は、令和2(2020)年から3年目で、開発などは平成28(2016)年から4年を費やした。発表会に出席した西野金陵、川鶴酒造、綾菊酒造、小豆島酒造は各蔵や製品によって個性の違いはあるが、おおむねトロピカルな香りやキリッとした酸味、香味の調和の良さが特徴だ。高松国税局・小濱元鑑定官室長らが3名できき酒し、講評した。

 オリーブ酵母で造られた日本酒に対する人気や期待度は高く、実際に清酒低迷の中でも全国各地から引き合いが多いうえ、海外など世界で今後も増える可能性を秘めている。協会酵母と違った天然酵母ゆえの仕込みの難しさも経験を重ねるごとに磨きをかけ、「野生味がある特性をつかみ、本年も良い出来栄え」と川人会長は太鼓判を押す。

 会見で各社は、オリーブ酵母の清酒について「十分にリピーターがついた。売れていない時期こそ設備投資という社長の指示もあって、新設備は2期目の工事に入るなど今後ジャンプアップ出来るようにし、期待して欲しい」(金陵)。「海外の引き合いが多く、世界に向けての良い武器になる。既存の製品とも差別化を図れ、生酒タイプも増やそうかと考えている」(川鶴)。

 「ワインタイプで好調な売れ行き。当社はスパークリングのタイプも発売後すぐ売り切れるなど今年も目玉にし、この魅力を全国、世界へ発信したい」(綾菊)。「同酵母を継続して使い、さらに技術を研究したい。小さな蔵だが、1年目から毎年製品を発売しており、オリーブの小豆島で造った酒として全国・世界へ贈りたい」(小豆島)。

 同県ではオリーブハマチなども有名で、臭みがなく新鮮と評価は高い。健康、安全、国産など近年のマーケットニーズからも今回の酵母は最適で、「クラフトジン」が世界で急増しているように植物に由来するジュニパーベリーのような「ボタニカル」は人気で、オリーブを含めあらゆる生活シーンで定着してきている。

 国内の清酒・日本酒は、トレンドにあわせて他の材料を混ぜると、酒税法上リキュールになるというのがネックだったが、今回のように酵母の新たな採取・開発は発想の転換で、ハーブや花植物など天然由来の成分を消費者に彷彿イメージさせることが可能となる。

 重要なプロモーションも世代を超えたマーケティングで、オリーブといえばポパイ、ほうれん草で力強いセーラーマン(水兵)はまさに瀬戸内を連想させ、国際芸術祭へとつながるなど、国際的にも通用するアイデアが生まれる。

 さらに世界的なボタニカルつながりなら、ジンが英国007の「ボンド・マティーニ」なら、日本はオリーブ酵母の清酒カクテルで明智小五郎や古畑任三郎で「アケチ・マティーニ」などバーテンダーたちの構想も際限なく広がる。近年国内で広がるウェル・ビーイングの考えにもマッチし、市場の成長性はスピード感で極めて大きい。