丹波杜氏組合 杜氏の技術向上を図る「兵庫県酒造大学講座」開催

2019年08月30日

 【兵庫】丹波杜氏組合は、組合員の新たな知識や技術の習得を目的に、「第116回兵庫県酒造大学講座」を8月19、20日の2日間、丹波篠山市民センター(丹波篠山市黒岡)で開催した。

 同講座は、伝統の技を受け継ぐ杜氏たちが、新たな知識や技術を習得するため毎年開催している研修会で、大阪国税局や灘酒研究会、酒類総合研究所など各所から講師として招き、約120人の組合員が参加した。

 授業は2日間行い、19日には「工程2(麹)、工程3(酒母)」「記帳・表示・食品」「工程1(原料及び原料処理)」「一般教養『糖尿病重症化を予防するために』」「管理1(製造計画)」「管理3(製成・火入れ・貯蔵)」、20日には「管理2(分析及び微生物管理)」「工程4(もろみ)」「酒造一般」の科目を学んだ。

 「酒造一般」の科目の講師を務めた大阪国税局鑑定官室の松丸克己室長は、酒類市場の現状について説明を行い、成人一人当たりの酒類消費数量の推移や酒類製造業の現状、最近の清酒の輸出動向などをデータ資料を通じて授業を行った。また、平成29酒造年度全国新酒鑑評会について、全国出品酒の成分値一覧や上位酒の成分値データ、使用酵母比率の推移などを説明した。松丸室長は同講座について、「大阪国税局では毎回講師として参加している。講座の内容が、丹波杜氏の技術や知識の向上につながればと願っている」とコメントした。

 20日には授業終了後に閉講式を行い、同組合の青木卓夫組合長(山名酒造)は、「酒造りは千差万別であるが、造りにおいて『面白さ』『楽しさ』『不思議さ』というものを常に感じることができることが必要かと思う。温故知新という言葉通り、基本があって新しい知識を学ぶのがこの講義の意味といえる。講義を通じて、何か自分に感じ入るものが一つでも見つかれば、それを良い酒造りにつなげてもらいたい。今年も蔵入りが近いので、怪我や事故のないよう健康に気をつけて、酒造りに励んでもらいたい」と組合員に激励の言葉を送った。

 また併せて、第19回丹波杜氏組合利酒研究会表彰や永年勤続優良技術者表彰なども行った。

 【兵庫県酒造大学講座の歴史】多紀郡では優秀な杜氏養成のため、明治35年(1902年)に第1回「酒造講習会」を開き、それ以後大正時代も続けていた。

 明治41年には酒造組合で「至誠録」を作り、責任をまっとうすること、品性を潔くすること、規律を正しくすること、信義を守ること、同僚互いに親しみ扶(たす)くること等を決めて、酒造に従事する者の信条とし、杜氏に向かって精進した。

 昭和3年には多紀郡醸造練習所を設けた。

 その後、「酒造講習会」は「日本酒醸造法講習会」として続けられたが、太平洋戦争のため、昭和19年は中止し、21年に復活した後、昭和50年には「兵庫県酒造大学講座」と改称した。