熊本の酒推進委員会 酒屋で生きる

2011年11月30日

 【熊本】熊本の酒推進委員会(正会員・熊本県内酒販店41店、緒方利彦会長)は11月13日、熊本市内のホテルで総会・勉強会を開催した。委員会は2005年に発足。県産の清酒と球磨焼酎の販売を通じ、熊本の酒文化向上を目指している。酒販業組合ではなく、同業者が連携する全国でも例のない組織。県内蔵元が賛助会員として活動を支えるなか、酒小売業の経営継続を模索し、会員店だけで販売する清酒「墨守」もある。

 当日は会員酒販店や県内の蔵元など約30人が出席。総会では、推進委員会が催している、消費者参加500人規模の酒会イベントなどの事業について報告や決算・予算の審議があり、新たな商材提案もあった。勉強会では、本紙九州支局・上籠竜一の話(テーマ「いま共生の時~美味しいお酒との出会い創り目指しスクラムを~」)を聴いた。

 推進委員会は毎年、酒会「くまもとの日本酒・焼酎を楽しむ会『愛してます!!くまもとの酒の夕べ』」を開催してきたが、第6回の今年は当初、震災配慮で中止が検討された。しかし「人の温かみを熊本から発信することが被災者支援につながる」(緒方会長)との考えで、名称を「くまもとの日本酒・焼酎の会~がんばろう日本!!熊本から元気を~」に改め開催。チケット代金の一部や酒のチャリティーオークションの売り上げ、会員個店が取り組んだ店頭募金を合わせ、104万円を復興支援のため寄付した。

 大手業務卸の進出で経営環境が変化するなか、緒方会長は「熊本県産酒のブランド構築に努め、まい進しなければならない。発会から7年が経つが、皆さんが他人任せではなく、一人一人が危機感を持ち、高い意識で目標へ向け努力すること、熊本の酒蔵が生き残ることが、われわれ小売店の生きる道につながる」と語り、活動の充実を訴えた。

 会員店限定の取扱い新商材も提案した。「熊本の米、水、人が醸す日本酒、球磨焼酎の良さを末永く熊本の人々に伝え、販売する活動」とは異なるが、蔵元からの販売依頼の打診に対し、会員店にとって貢献できる商材であればということで検討の結果、球磨地方の蔵元が地元の芋で仕込んだ芋焼酎2種(「古酒・蓮寿庵」=恒松酒造本店、「紫乙姫」=堤酒造)の取扱い希望を募った。

 勉強会での話は、酒類生販三層業者が信頼関係を取り戻すよう求めるもの。造り手と売り手のスクラムで、美味しいお酒と出会う機会を増やし需要を掘り起こすよう提案した。「墨守」の販売実績の現状から、商品育成の取り組みの不足も指摘した。

 「墨守」を醸造する蔵元も、販売実績の底上げを要請した。推進委員会の前会長・田尻幸史さんは「売れ始めたら売ろうではおかしい」と、会員店の意識改革を促す一方、全国の清酒に負けない品質向上を求めた。まともに造りまともに売る、そのためのパートナー、対等で高め合う関係という原点を見据え、本音の話で熱を帯びた。