公正取引委員会は「酒類の流通における不当廉売、差別対価等への対応」(酒類ガイドライン)を改定し、発表した。
今回の改正では、「供給に要する費用を著しく下回る対価」の考え方の中の、一般不当廉売ガイドラインで示されている「供給に要する費用」を「総販売原価」とし、通常の販売業における「総販売原価」とは「仕入原価に販売費および一般管理費を加えたもの」とした。また、「廉売対象商品を供給しなければ発生しない費用(以下・可変的性質を持つ費用)を下回る価格」については「供給に要する費用を著しく下回る対価であると推定される」とした。
さらに、どのような費用が可変的性質を持つ費用となるかについては、「廉売対象商品の供給量の変化に応じて増減する費用か、廉売対象商品の供給と密接な関連性を有する費用かという観点から評価される」とし、「変動費(操業度に応じて総額において比例的に増減する原価)」は可変的性質を持つ費用であるとした。
また、明確に変動費であると認められなくても費用の性格上、廉売対象商品の供給量の変化に応じてある程度増減するとみられる費用は、「特段の事情がない限り可変的性質を持つ費用と推定される」とし、酒類卸売業者が物流センターの使用料として納入金額に比例して支払う「センターフィー」は「酒類卸売業者の可変的性質を持つ費用と推定される」とした。また、「仕入原価」は「特段の事情がない限り可変的性質を持つ費用と推定される」とし、仕入原価のうち「仕入価格」は「可変的性質を持つ費用」と位置付けた。「販売費」のうち、「運送費」などの廉売対象商品の注文の履行に要する費用についても「可変的性質を持つ費用」とした。
酒類小売業者が商品を販売する際、消費者に対し販売価格の一部または全部の減額に充当できるポイント(1ポイントを一定の率で金額に換算するなどの方法)の提供については、①ポイントを利用する消費者の割合②購入額の多寡にかかわらず提供されるものか、一定金額の購入を条件として提供されるものかなどのポイントの提供条件③ポイントが利用可能となるタイミング、有効期限、利用にあたっての最低ポイント数の設定の有無など、ポイントの利用条件--などの要素を勘案し、「ポイントの提供が値引きと同等の機能を有すると認められる場合は、『対価』の実質的な値引きと判断する」とした。
「不当に低い対価で供給」する場合に該当し得る行為態様としては、酒類販売業者が可変的性質を持つ費用以上の価格(総販売原価を下回ることが前提)で販売する場合や、可変的性質を持つ費用を下回る価格で短期間に販売する場合があるが、「このような場合であっても、廉売対象商品の特性、廉売行為者の意図、目的、廉売の効果、市場全体の状況などからみて、周辺の酒類販売業者の事業活動を困難にさせるおそれが生じ、公正な競争秩序に悪影響を与えるときは、不公正な取引方法第6項の規定に該当し、不当廉売として規制される」と改定。「周辺の酒類販売業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるかどうか」の考え方については、周辺の酒類販売業者の経営上ビールが重要な商品である場合に、多店舗展開を行っている大規模な事業者、一定の商圏において市場シェアの高い事業者などがビールを集中的に廉売する場合は、「一般的には周辺の酒類販売業者の事業活動に影響を与えると考えられるので、可変的性質を持つ費用以上の価格での販売であっても不公正な取引方法第6項の規定に該当する場合がある。この場合には、廉売対象商品の供給と関連のある費用(仕入原価および販売費)を下回っているかどうかを考慮する」と記した。
酒類の不当廉売事案に対する公正取引委員会の対応については、引き続き、「申告のあった事案に関しては、処理結果を通知するまでの目標処理期間を原則2カ月以内」とし、「過去に注意を受けたがなお再び注意を受けるような事業者に対しては、事案に応じて①責任者を招致した上で直接指導を行う②周辺の酒類販売業者に対する影響が大きいと考えられる場合には、簡易迅速な処理によるのではなく、排除措置命令や警告に至らない場合であっても、責任者を招致するなどした上で文書により厳重に注意する」。申告した側に対しても、「問い合わせがあった場合には、事業者の秘密や今後の審査活動に支障をおよぼす事項を除き、可能な範囲で説明する」と付け加えた。
