酒類卸売業者の概況 全体の約4割が欠損・低収益企業

2018年03月12日

 国税庁は「酒類卸売業者の概況」をまとめ発表した。それによると、酒類卸売免許を有する企業1376者のうち、欠損および低収益企業は530者あり、全体の38・5%と高い割合を示した。酒類業界では、昨年6月に「酒類の公正な取り引きに関する基準」が施行され、一部に市場環境の改善が見られるものの、酒類卸売業界は厳しい経営環境が続いている実態が明らかとなった。

 調査は平成28年4月1日現在で、全酒類卸売業またはビール卸売業の酒類販売業免許を有する酒類卸売業者1554者を対象に行われ、うち1376者から回答を得た。回収率は88・5%になる。

 1376者の総販売数量は、1354万1714klで前年度に比べ14%の増加となった。販売先別では、小売業向けが817万5175kl(前年比6・6%増)で最も多く構成比は60・4%となり、次いで卸売業者向けが367万1661kl(32・1%増)で構成比は27・1%、対消費者向けは169万4878kl(18・9%増)で構成比は12・5%となり、すべての販売先で増加した。

 酒類別では、ビールが最も多く444万7967klとなり構成比は32・8%となり、スピリッツ・リキュールが380万6563klで28・1%、焼酎が141万5270klで10・5%、発泡酒が112万7782klで8・3%、清酒が91万3007klで6・7%、その他の醸造酒が75万1klで5・5%と続く。

 酒類卸売上高は5兆2624億7300万円で前年より5000億円程度増加した。酒類卸売の売上総利益は3865億100万円で、1000億円程度の増加となった。一企業平均では、総販売数量は9841klとなり1400kl程度増加、総売上高は266億円となり微減となった。

 総従業員数は18万1445人で前年より5000人減少。うち、酒卸部門の従業員数は1万9196人となり、前年より1000人程度増加した。

 現在の卸売業者数は、資本金1億円以下、従業員100人以下の中小企業が最も多く1089者あり、全業者に占める割合は79・1%にのぼる。次いで、資本金1億円以下、従業員100人以上の企業が90者で割合は6・5%となり、従業員100人以下の個人は79者あった。一方で大企業は83者で全体の構成比は6%を占めた。

 また、回答した1376者のうち欠損および低収益の企業数は530者となり、その割合は38・5%と高い数字を示した。特に欠損企業は422者あり、うち営業利益赤字の企業は378者と、卸売事業者が依然、多くの企業で営業赤字が続いている実態が明らかとなった。中でも中小企業で40・5%が欠損および低収益となっており、中小の卸売業者の経営は厳しい状況にある。一方で、大企業の欠損および低収益の割合は7・6%となっており、卸売業者の経営は、売上金額が大きくなるにつれて欠損および低収益企業の割合が低くなっているのが分かる。