ヤンマーと沢の鶴 酒米プロジェクトを合同発表

2018年02月21日

 【大阪】ヤンマーは、リモートセンシング(遠隔探査)や土壌診断など、次世代の稲作に欠かせないヤンマー独自の営農・栽培支援を活用した酒米ソリューションの提供を4月から本格的に開始する。その第一弾として今回、沢の鶴が、ヤンマーの酒米ソリューションで生産された酒米を使用した純米大吟醸酒「沢の鶴X01」を販売する。

 日本国内では、米の需要低下や需給調整の見直しなど、新たな販路の確保や付加価値の高い米の栽培といった稲作農家へのサポートが重要となっている。そのような中、ヤンマーではこれまで取り組んできた機械化・省力化・資源の有効活用に加え、加工・流通・販売を含む「食のバリューチェーン」を目指している。2016年8月に設立したバイオイノベーションセンター倉敷ラボでは、稲の品種開発や水田土壌の改良など、稲作関連の研究を進めている。また、2017年10月に設立したファームアイ㈱はセンシングにより圃場の生育状況を“見える化”し農家に合った改善策を提案するなど、ICTを活用した営農支援の提供を行っている。このような研究成果や営農・栽培支援を組み合わせ、安定的な酒米契約栽培を提案していく。

 2月7日に大阪市北区のヤンマー本社で開催した合同記者会見には、ヤンマー・アグリ事業本部の新村誠副本部長、沢の鶴の西村隆社長らが出席し、今回の取り組みについて説明した。

 ヤンマーの酒米プロジェクトリーダーの山岡照幸氏は、同社が提供する酒米ソリューションの流れについて、「日本酒メーカーの要望に対し、種子開発やタンパク質をコントロールした酒米などを提供する。日本酒メーカーが求める酒米の生産を農家とマッチングすることで、農家の収益維持・新規取引などを支援する。また、日本酒の輸出拡大に伴い、日本酒メーカーが求める最適な酒米づくりを支援していく」と示し、今後の取り組みについて「日本酒市場で、2023年を目処に日本酒メーカー10社との取り組みを目指し、酒米生産量の10%を獲得したい」と語った。

 沢の鶴の西村社長は、「米屋を原点とする当社は米にこだわりを持っており、創業から300年継承してきた『米を生かし、米を吟味し、米にこだわる』を基本に日本酒づくりを行っている。今回、ヤンマー社とともに取り組むことで、ヤンマー社の持つリモートセンシング、土壌診断、密苗などの最先端の技術と、当社の持つ醸造技術を合わせることで、酒米の共同研究と日本酒の共同開発を行う。これにより、契約栽培によるトレーサビリティの管理された安心・安全な酒米による酒造りに着手し、第一弾としてまだ世に出ていないDNAを持つ新しい酒米で醸す『沢の鶴X01』を発売する」とヤンマー社と取り組む意義を説明した。

 【「沢の鶴X01(エックスゼロワン)」概要】同商品は、ヤンマーと名古屋大学の共同研究のもと選出された、酒造りに適した一般米で醸造した。仕込み水に名水百選「灘の宮水」を使った中口の純米大吟醸酒となる。同社はヤンマーから提供された米で酒造適正評価やテスト醸造を繰り返し行い、条件を満たした独自の米を100%使用して昨秋仕込み、完成した。

 アルコール分は15・5%、容量は180ml、参考小売価格(税抜)は1500円で、4000本の限定販売となる。2月8日から同社オンラインショップで予約受注を開始し、2月23日から沢の鶴資料館ミュージアムショップで店頭販売、2月26日から一般販売を開始する。