遺伝子解析でアルコール体質を検査 武庫川女子大学設立のベンチャーが開始

2017年06月07日

 【兵庫】武庫川女子大学(西宮市)が設立したベンチャー企業「武庫川ライフサイエンス研究所」は、遺伝子解析によるアルコール体質検査事業を開始した。同研究所では、「自分の体質を知ることが、アルコールと付き合う上で必要である」との趣旨のもと、大学生や新入社員に向けた体質調査を行い、さらに拡大を目指している。

 開発のきっかけとなったのは、武庫川女子大学バイオサイエンス研究所ヒトゲノム診断センターで、①未成年飲酒防止のためのアルコール健康教育②イッキ飲み等による飲酒事故防止③遺伝子診断による個別化医療の普及・理解に向けた啓蒙活動――を目的に、2010年から国立病院久里浜医療研修センター監修のもと、アルコール体質遺伝子検査を実施したことによる。同大学の木下健司教授は、「この6年を経て、検査のためのキットが確立し、調査にかかる費用も安価で可能となった」と語る。

 「アルコール体質検査キット」の使い方は、①サンプリングキットを開封し、サンプリングプレートと滅菌済スワブを取り出す②滅菌済スワブで歯茎の外側・内側、頬の内側をこすり唾液で湿らし、口腔粘膜細胞を採取する③スワブの先端をサンプリングプレートに押し当てる④サンプリングシート、返信用封筒をビニール袋に入れる――の流れで行い、サンプリングを同研究所に渡すと、後日検査結果が郵送で本人に通知される。

 同検査ではアルコール体質を、アルコールの代謝に関わる2種類の酵素(ADH1BおよびALDH2)の働きによりA~Eの5つの体質に分け、「わたしのアルコール体質は●型です」というカードで体質を本人に知らせる。

 5つの体質の主な特徴は、<A>飲酒で赤くならず、お酒に強いが抜けにくい、アルコール依存症に最もなりやすいタイプ<B>たくさん飲んでもアルコールの分解が早い、お酒に強いタイプ<C>お酒に弱いのに顔に出にくいので、飲めるタイプと勘違いしがち。がんリスクが高いタイプ<D>少量の飲酒で顔がすぐに赤くなり、お酒に弱いタイプ<E>お酒がまったく飲めないタイプ――となっている。

 木下教授は、「簡単な検査で、自分のアルコール体質を知ることが可能となる。健康飲酒の推進を進めることに役立つ取り組みとなる。我々の研究成果を社会に還元するとともに、今後は事業として継続させるべく、多くの企業や大学に興味を持ってもらいたい」と今後の抱負を語った。