ソムリエ協会、ワインで復興支援

2016年08月10日

 【熊本】被災をワインで癒し復興の力につなげてもらおうと一般社団法人「日本ソムリエ協会」(田崎真也会長、本部事務局・東京都)の著名ソムリエが来熊し熊本市で開催されたイベントの盛り上げに奔走した。7月30・31日の“100円ワインフェス”には田崎会長はじめスターソムリエが登場しワインをサービス。31日夜には飲食店や酒販店など個店にまで駆けつけた。ラベルが損傷などしたが割れずに生き残った奇跡のワインを揃え“被災ワインを使った復興祈念ワイン会”を企画した「川上酒店」には、協会常務理事でシャンパーニュの第一人者、阿部誠さんが訪れ華麗なサービスやもてなしで参加者を魅了した。一行は滞在中に県へ義援金を贈ったほか、県産清酒蔵の支援になればと酒造組合にも赴きテイスティングをするなど交流を深めた。

 「日本ソムリエ協会」の復興支援は、全国の支部を通じた募金活動にとどまらない。南九州支部・熊本県会員に対する「中長期的な応援」として集客につながるよう、会員がいる宿泊施設や飲食店、小売店などを網羅したダイレクトハンド(配布用チラシ)を制作。マップ付きで、ホームページやメルマガでも配信している。そして同支部の「和食とワイン」セミナー、「熊本支援・アペリティフ懇親会」(7月31日、熊本市のホテル日航熊本で開催)に合わせ、「賑わい創出の一助になれば」と、会員等が主催するワイン会の盛り上げ役を買って出た。

 【7月30・31日、熊本市「花畑広場」】“100円ワインフェス”は九州全域に営業所と小売店舗を展開する業務用酒類販売「オーリック」(本店・鹿児島市、福岡本社・福岡市)がプロデュース。ビール4社が協賛した。10カ国に及ぶ世界のワイン(日本ワイン含む)約250種がいずれも1杯100円。ラベルが破損するなどした高額の被災ワインも提供された。100円フェスは今年5月下旬、ビールでも催している。日本ソムリエ協会・田崎会長らが駆けつけ、無料で1杯を振る舞うサービスもあった。両日合わせ8000人が来場。1500本分のワインが販売された。

 【7月31日「川上酒店」】同店(熊本市中央区万町、川上靖代表)が企画した有料酒会“被災ワインを使った復興祈念ワイン会”には約30人が参加。同店が主宰する「HIGO KUMAMOTOおとな塾~ワイン講座~」の卒塾生の多くが集った。ソムリエの川上千恵さんは「震災で7割近くのワインが割れたが、残ったワインを『奇跡のワインで縁起が良いね』と言ってもらえた。その奇跡のワインを楽しんでいただくことで感謝の気持ちをお伝えできれば。阿部ソムリエはシャンパンで日本一。尊敬する憧れの人にサービスいただけることは熊本では滅多にないこと」と話した。会ではラベルが汚れるなどで売れなくなった高額ワインをどっさり揃えた。歓喜で迎えられた阿部さんは「震災の爪跡は酷く色々あるだろうが一時忘れ思い切り楽しんでいただきたい」と被災地の人の想いに寄り添った。

 【8月1日、熊本県庁】日本ソムリエ協会は復興支援のため熊本県へ477万8813円の義援金を贈った。全国で販売した協会オリジナルくまモンバッジ1万2000個分の売上(制作費を除く全額)と募金、協会からの見舞金を合わせたものだ。小野泰輔副知事へ、一連の賑わい創出への取組について報告した田崎会長は「今の時期はまちを元気にする、心を楽しくすることが大切だと思った」と語った。小野副知事は感謝の言葉を述べるとともに「被災者が日常を取り戻す」ことへ一層の支援を求めた。対談テーマは県産の日本酒や赤酒にも。小野副知事は「地元のコメを使うようになってきたのは良い傾向。地元の農家とつながっていけば豊かな個性が生まれる」との考えを示した。県職員は県初のオリジナル酒米「華錦(はなにしき)」で仕込んだ日本酒が今年10月に披露されることを伝えた。田崎会長は「赤酒は肉料理にも合いオリジナリティがありおもしろい」と県産伝統酒を称えた。