国税庁が通達「震災特例」を発出

2016年05月10日

 国税庁は、平成28年熊本地震で甚大な被害が発生した熊本地方の酒類製造、販売業者の移転や各種報告書の提出、管理研修の受講などを柔軟に対応する通達を発出した。県内では度重なる大地震により大きな被害が発生しており、再建を後押しする制度となる。これまでも阪神淡路大震災や東日本大震災などでも同様の通達を発出している。

 国税庁は熊本地震で酒類業者が被災した場合の移転や報告書の提出、酒類販売管理研修の受講などを弾力的に取り扱うこととする通達「平成28年熊本地震により被災した酒類製造場などにかかる酒類製造免許などの取り扱いの特例」を発出した。熊本地震の被災状況を踏まえ、被災した酒類製造場などにかかる酒類製造免許などの手続きについて弾力的な措置を講じることで、酒類業者などの事務負担の軽減を図る必要があると判断。過去に阪神淡路大震災、新潟県中越地震、新潟県中越沖地震、東日本大震災の発生時にも同様の取り扱いを実施している。

 通達は平成28年熊本地震で、①酒類製造場、酒類蔵置場の全部または一部が被災したため、酒類の製造または酒類の貯蔵などの全部または一部ができなくなった場合②酒類販売場または酒類の蔵置場の全部または一部が被災したため、酒類販売業の全部または一部ができなくなった場合③酒類製造者が①に該当する酒類製造者と直接取引を行っている場合④酒造組合もしくは酒販組合(連合会を含む)または酒類販売管理研修実施団体の事務所などが被災したため、その活動が困難である場合――に適用される。

 特例の範囲は、酒類製造場や酒類販売場が被災したことにより製造や販売ができなくなったことから酒類の製造や販売を他の場所において行おうとする場合(仮移転)については原則として移転を許可。「酒類製造場(酒類販売場)移転許可申請書」の提出時の添付資料については「移転後の酒類製造場(酒類販売場)の所在地を明らかにすることのできる書類」があれば足りることとし、その他の書類については被災状況などの実情に応じて提出時期を弾力的に取り扱う。

 また酒類の未納税移出の取り扱いについては、酒類製造場が被災したことで酒類の貯蔵ができなくなったことから、他の酒類製造者の酒類製造場などへ一時的に貯蔵を委託する場合などについても承認が与えられる。

 当該酒類や酒母またはもろみを産業廃棄物処理業者などの施設で廃棄する場合、当該事業者が作成した廃棄の事実を証明する書類の交付を受け保存するなど、その事実が証明できるときは、当該廃棄は製造場内で行われたこととするなど、亡失などの届け出についても被災状況に応じて弾力的に取り扱う。

 酒類小売業者もしくは酒類販売管理者が被災したことまたは酒類販売管理研修実施団体の事務所などが被災し、近隣で酒類販売管理研修が実施されないことから酒類販売管理研修を受けさせることが困難であると認められるときは、被災状況などの実情に応じて受講時期を弾力的に取り扱う。

 酒造組合、酒販組合の事務所が被災したことなどにより組合法第34条に規定する通常総会が定められた時期までに開催できないなどの場合は、当面同法の規定は適用されないこととした。