JA全農酒米の複数年契約拡大へ

2016年02月09日

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は主食用米や加工用米などで導入していた米の複数年契約を酒造用原料米にも導入し、平成28年産米から拡大していく方針だ。

 これまで酒造用原料米の生産は、単年ごとにJA側が需要を見込んで作付けを行い供給しており、需要と供給のミスマッチにより、年度により不足と供給過剰を繰り返すなどの問題が発生していた。特に酒造好適米については、酒造用途での使用に限定されるため、JA側は米の需要にもとづく安定生産、安定供給について日本酒造組合中央会などと協議を続けていた。

 国は、平成30年産からの米の生産調整(減反政策)を廃止する方針であり、これにより農家やJA等が、前年の自らの売れ行きや需給動向を見ながら、米の生産・販売量を決めることから、需要量がはっきりしない米については、生産農家が主食用米や他の作物に作付転換することも考えられる。JA全農は、複数年契約を締結することで「長期スパンで需要者の要望に応えていくことが可能となり、また米生産者が安心、継続して酒米の生産ができるため、生産農家の経営の安定にも寄与する」とし、酒米生産農家と実需者である酒造業者の双方のメリットにつながる取り組みにより、一層の〝ウイン―ウインの関係〟が構築されることを期待している。JA全農・米穀部原材料課は、「最初から正確な数字での契約は難しいとは思うが、まずは第一歩として複数年契約を導入してもらい、徐々にその取り組み枠を拡大してもらいたい」と話している。

 複数年契約は3年契約を基本とし、3年で購入希望数量が100%になるよう毎年3月末までに3か年分の申し込みを行う。すでに一部地域で導入されているが、平成28年産米からはその取り組みを全国的に拡大していく方針で、今後、JA全農の各都府県本部を通じ全国の酒造組合などへ複数年契約の提案、段階的な拡大について協力依頼を行っていくという。

 なお、平成27年産酒造好適米の検査数量は約10万tとなり、昨年実績の9万tを1万t程度上回る見込みで、また加工用米は26万tで昨年実績の27万tを1万t程度下回る見込み。JA全農によると、いずれも酒造側が求める希望数量は確保できるという。