TPP交渉大筋合意

2015年10月14日

 難航に難航を極めたTPP交渉は10月5日、大筋で合意に至った。酒類関係については、日本側から輸出する酒類は全締約国で関税撤廃で合意した。国内の酒類市場が縮小する中、輸出は好調に推移していることから、酒造各団体は今回の合意内容については好意的に捉えている。

 政府は10月5日、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定が、日本を含む参加12カ国の間で大筋合意に至ったと発表した。

 内閣府などの発表によると今回の合意内容は、日本に輸入される酒類については、ボトルワインは協定発効後、段階的に関税を緩和し8年目に撤廃となるほか、清酒・焼酎についても同11年目まで関税撤廃期間が設定され撤廃することで合意した。
 一方で、日本から輸出される酒類は、全締約国で関税が撤廃となり、特にアメリカ、カナダ向けの清酒については協定発効後、関税の即時撤廃を獲得した。

 また、蒸留酒業界などが要望していたアメリカにおける蒸留酒の容量規制についても、アメリカ財務省が日本の酒類業界からの嘆願書を受領次第、蒸留酒の容器容量規制改正案を公表。パブリックコメントを経て、容器容量規制の撤廃を実現するための手続きに着手することを約束する文書が交わされた。

 さらに、日本とアメリカの関心酒類(日本は地理的表示の日本酒・焼酎など、アメリカはバーボンウイスキーなど)については、日米それぞれの関係法令に従って製造されたもの以外は双方の国内において販売禁止とすることに向けた手続きの検討を開始することを文書化。カナダとの間でも地理的表示である自国産酒類について、保護の事実を認識する文書を交わすなど、原産地保護の点についても業界の希望に沿った内容での合意となった。

 一方で今回の合意内容は、農業分野に大きな影響をおよぼすとされていることから、原料を国産米に頼る清酒業界でも懸念を示す関係者も少なくない。今後の推移を慎重に見守るとともに、業界への影響を最小限に抑えなければならない。

 TPP大筋合意を受け、酒類業界各組合代表が談話を発表した。

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 日本酒造組合中央会・篠原成行会長談話(要旨)

 本会は政府がクールジャパン戦略の一環として取り組む日本産酒類の総合的な輸出環境整備に関して國酒(日本酒、本格焼酎、泡盛、みりん二種)の輸出振興に力を傾注してきた。

 そうした中、今回の酒類に関する交渉結果は、清酒の最大の輸出国である米国における清酒の関税が即時撤廃となるなど、國酒の輸出に追い風となりうるもので、本会は今回の交渉結果を歓迎する。わが国に輸入される清酒、焼酎の関税が10年間で段階的に撤廃されることになっていることはギリギリの交渉を行っていただいた結果であると受け止めている。

 また、本会が長年要望してきた米国の蒸留酒の容量規制について、米国政府が規制改正に向けた手続きを開始することに合意したことに関しては、高く評価している。

 さらに政府が指定している清酒、焼酎の地理的表示について、現在指定を検討している「日本酒」を含め、米国内で保護するための手続きを開始することに合意したことに関しても、今後の進展を期待している。米国政府に対しては、これらの内容の実現に向けて迅速な対応を要請する。

 日本の誇る麹文化の粋(すい)である國酒の生産者を代表して、今回の交渉結果を歓迎し、輸出振興、需要振興になお一層の努力をしていく。

 日本ワイナリー協会・横山清理事長談話(要旨)

 ワインなどの関税撤廃に当たっては、激変緩和のための一定期間の猶予を設けるよう要望してきたが、政府においてギリギリの交渉を行った結果、ボトルワインの関税が7年かけて段階的に撤廃されるなどの内容となったことを高く評価する。またわが国唯一のワインの地理的表示「山梨」についてもアメリカにおいて保護に向けた検討が行われることになったことについても高く評価する。

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 日本洋酒酒造組合・中川圭一理事長談話(要旨)

 酒類に関する交渉結果は、日本産の洋酒の今後の輸出の追い風となりうるもので当組合は今回の交渉結果を歓迎する。また、蒸留酒の容器容量規制についても進展が見られたことを高く評価する。

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 日本蒸留酒酒造組合・大宮久理事長談話(要旨)

 政府関係者の尽力により、TPP交渉が妥結し、アメリカにおける蒸留酒の容器容量規制の改正に向けた手続きを進めることについて合意が得られ、当組合の要望の実現に向けた動きが大きく前進した。

 今後、米国内の議会手続きなどはあるが、制限が緩和されれば参入障壁が解消され輸出環境が改善されるものと期待している。