【大阪】酒販年金の被害回復のため、大阪を中心とする西日本の年金被害者が原告となり、小売中央会とチャンセリー債契約当時の中央会役員、クレディスイス銀行、チャンセリー債の紹介者ら20人を被告にした損害賠償訴訟を1月15日、大阪地裁に起こした。(写真は訴状を手に大阪地裁に入る酒販年金の被害者と弁護団)
今回、原告となったのは大阪府、兵庫県、京都府など、西日本の酒販年金の被害者31人(酒販年金加入者は32人だが1人は死去したため加入者が相続)で、損害賠償の請求金額は7351万9922円。このうち6683万6305円が、原告の酒販年金掛け金総額の70%にあたる。1人あたりの損害額は平均で208万8364円(掛け金総額の70%ベース)で、被害の最高額は677万4586円になる。
被告は、小売中央会とチャンセリー債を契約した平成14年から15年当時に中央会の役員を務めていた理事9人、監事2人、年金運営委員1人。この中には当時小売中央会会長を務めていた幸田昌一氏や専務理事の吉竹脩男氏、現小売中央会会長の藤田利久氏も含まれている。さらに、144億円の年金資金の送金窓口となったクレディスイス銀行と、当時同社のシニア・ヴァイスプレジデントだった日下部治郎氏。チャンセリー債を小売中央会に持ち込んだ関秀雄元事務局長や金融ブローカーの砂子健氏、元代議士秘書の山口鉄弘氏、そしてチャンセリー債を仕組んだ張本人のゴッドリー氏とチャンセリー・リーデンホール社など、3法人20人。
原告と酒販年金被害対策弁護団(団長=三木俊博弁護士)は、昨年1月の結成から、①老後生活の支えだった酒販年金がどのような理由で破たんしたのか②その責任はどこの誰にあるのか③チャンセリー債の回収を図るとともに④年金破たんをもたらした内外関係者の責任を追及して被害の回復を図る--ことを目的に、集中的な取り組みを実施。小売中央会がチャンセリー債の回収を断念したことや、問題解決を目的に組織された年金加入者団体が、真に利益となる組織ではないと判断して、この組織への参加を取りやめ、今回の訴訟に踏み切った。
1月15日、大阪地裁への提訴を前に行った説明会で、弁護団の三木団長は「今回の訴訟のポイントは、当時の中央会の役員を被告としたことだ。彼らの怠慢の責任は極めて重いと考えている。リスクの高い金融商品に多額の投資をしてはいけないことは誰にでも分かる。それが一部の実行者のリベート欲しさの行動によって実行に移された。その過程で開かれた理事会もずさん極まりない。小売中央会には監督責任があり、当然責任を負うべきだ」と説明。裁判の見通しについては、「被告人に国外の人間が含まれていることもあり、初公判は4月以降。結審するまでには3年ぐらいの時間が必要ではないか」と述べた。
ある原告の1人は「絶対安全だという言葉を信じて、銀行預金を取り崩して酒販年金に振り替えた。不正が行われていることは全然知らなかった。あまりのずさんさに怒りを感じるし、老後の蓄えと思っていた年金が返ってこないことで将来も不安だ」と怒りを抑えながら語っていた。
同弁護団では、今後第2次訴訟も検討しており、2月末をめどに年金被害者から原告を募っていきたい、としている。連絡は酒販年金被害者対策弁護団(溝内有香事務局長、TEL06-4706-1626)まで。
なお、同日には東京の酒販年金被害者84人も、小売中央会役員らを相手に総額2億9455万1601円の損害賠償請求の訴訟を行った。今後、この両組織は連携しながら活動していく予定で、裁判の行方が注目されている。