「白岳」高橋酒造、ウィスキー事業参入へ

2023年01月30日

 【熊本】本格米焼酎の大手メーカー、「白岳(はくたけ)」高橋酒造(本社・人吉市、高橋光宏社長)がウィスキー事業に参入する。地元の旧田野小学校(同市田野町)の校舎等を『田野蒸留所』及び地域交流施設に改修するもので、事業費は約10億円に上る見込み。令和5年6月着工、6年4月生産開始、令和9年度商品リリースの予定。1月26日、人吉市の白岳伝承蔵で会見を開き発表した。

 ウィスキー事業への参入について「当社は120年にわたり本格米焼酎の製造・販売を行ってきたが、昨今の飲酒様態の多様化にともない、本格焼酎全体の売上げが減少している。この消費者ニーズの変化に対応すべく、田野地区の清澄な水や自然背景を活用したストーリー性のある新たな商品造りを展開したい。お酒造りにおいて水は重要であり、良質な田野の水は最適であると判断した。また田野の肥沃な自然と歴史は物語性にも富んでおり、そういった心を豊かにできる環境でウィスキーを造りたいと思った。近年ジャパニーズウィスキーは世界的に価値を認められ、国内外問わず需要が伸び続けている。この市場に対する将来への展望と、田野地区が酒造りに最適な環境であることを踏まえ、田野の地域性を活かしたウィスキー事業に挑戦することを決断した。また、田野地区の持つ持続的環境資源を生かしながら、同地区の自然と戯れることが可能な体験型の観光交流施設の開設も予定している。これまで田野地区において守り継がれてきた伝統行事なども尊重し、地元の方々と融和を図りながら、今まで培ってきた蒸留技術を駆使し世界で愛されるウィスキーを造っていきたい。人吉復興のための観光の一助にもなればと考えている」とした。

 同地は熊本県南、球磨人吉地域で造られる本格米焼酎(球磨焼酎)の産地。球磨焼酎の蔵元は球磨川沿いに27蔵あり、令和2年(2020)7月豪雨災害では下流域での被害が大きく、5蔵が甚大被害、うち3蔵が全損した。観光客激減に伴う販売減など被災被害は全蔵に及んだ。球磨焼酎の総出荷量(課税移出数量)は令和3酒造年度(3年7月~4年6月)約1万800㎘(約6万石)。

 高橋酒造は明治33年(1900)創業。昭和49年(1974)減圧蒸留機を導入。球磨焼酎が全国へと販路を拓く、製造技術革新をけん引した。

 今回の事業は、県のくまもとアートポリスプロジェクトにも採用され、後世に残り得る文化的資産を創り、地域への波及効果を生み出すことなどを通じ、豪雨被災からの創造的復興に資することが期待されている。

 商品のリリースは稼働から3年以上の熟成を経た令和9年度以降を予定。見学施設は、生産開始から商品リリースまでの期間に完成させる予定だ。改修規模は延床面積で約1300平方m。年間の生産予定数量は700㎖換算8~10万本程度としている。