全農広島と広島県酒造組合 最高水準「日本酒検索」

2023年05月19日

 【中四国=広島】JA全農ひろしま(全農広島県本部、米穀部・東広島市)は、広島県酒造組合(広島市)と共同で、同組合公式サイト内に日本酒を多角的にデータ検索できる本格的なシステムを構築する。近年、厳しい状況に置かれた日本酒の良さを見直してもらうと同時に、大幅減となった原料米・酒米の支援にもつないでいく。

 担当する米穀部・宮本政宏氏によると、同県は全国3大銘醸地の1つとして西条などを中心に酒蔵の集積率が高く、様々な種類のメーカーや美味しい酒が多い。逆に「どれを選んで良いか迷う」ことも多いことから、酒造組合も同様の問題を抱え、両者の課題解決策が一致。最近の若者は、スマホやタブレットなど携帯端末で簡単に検索することから、今回の「広島の酒・販売拡大支援プロジェクト」に至った。

 同プロジェクトは、全農側が昨年2022年3月に正式提案し、組合は同年6月に理事会で決定。総額約1200万円の事業で、内訳は主にメインのシステム代900万円、現行サイトの古い土台改修150万円ほか、プロモーション動画やロゴマーク制作などに同額。正式公開は、当初4月末を予定していたが、万全を期して5月連休明けにし、開発ベンダーによるサーバー管理を移管する運び。

 今回のシステムは、検索項目が30を超え、初心者や入門者が「何をどう選んで飲んだら良いのか」という初歩的な悩みの解決から、「貴醸酒」などコアな日本酒ファンのマニアックな要求まであらゆる検索に対応。贈り物やパーティー、独り酒など用途に応じた検索から、プレゼントで上限金額3千円以上、精米40%以上など高度な複合検索ほか、「刺身に合う」などフリーワード検索も可能な優れもの。

 このため検索項目は、酒質、原料米の種類、酵母、価格、容量、精米歩合、アルコール度数から最適な温度帯や各酒蔵の情報、杜氏、歴史、公式サイトリンクなど詳細で、操作も指でスライドさせるインタラクティブな方法を採用していることから、ユーザビリティに優しい。加えてデザイン性もアニメーションを活用するなど見た目の楽しさに加え、コメの丸と雫を組み合わせたシンボルデザインはコメが仕込みで液体の酒に変わることや、徳利を傾けて飲んでいる様子、人の輪など複合的な意味合いや意義を表現。

 データベース(DB)検索は、オラクルをはじめUNIXなど正規表現や日本語の全文検索、対話型とプログラミングやアルゴリズムが格段に進化してきたが、今回の日本酒検索システムは全国でもほぼ例がなく、開発したベンダー関係者でさえ「全国トップクラスの進んだ技術で素晴らしい出来栄え」と豪語するほど最高水準のレベルを誇るという。

 強力なシステムが自慢だけでなく、使い手に主軸を置いているのが真骨頂で、飲食店の業者や店員さん、その店で飲んでいる消費者ほか、小売店、卸など生販にとって実際に使いやすいシチュエーションが想定できる。データの重要マスターは管理者が安全管理するが、申請して無料アカウントが発行された各蔵元は自社のマスターを更新できる仕組みで、飲食店や小売など販売店も同様に自店が取り扱いの銘柄ブランド・グループを作り、専用メニューの作成などが可能。さらにQRコード化もできるという。

 今後の展開については、県内の酒蔵45社のうち現在エントリー30蔵をより拡大し、使いやすさについてSNSなどインフルエンサーや大勢の口コミで広がることを切望。通販業者ではないため、検索即発注という訳にはいかないが、お店で検索や都度メニュー提案があれば飲酒の楽しさや便利さは格段に広がる。

 G7では国際メディアセンターに世界各国から3千人の記者が来るといい、現在は日本語だけの組合サイトを英語とフランス語の2カ国多言語化に対応する。京大出身で多方面に能力と実力を発揮する宮本氏は「当システムは拡大できるかどうかが当面の課題だが、公開スタートして2~3年後など将来的にどう対応していくかも考えていきたい」と今後の展開を視野に構想を練っている。