【宮崎】霧島酒造(江夏順行社長、本社・都城市)が『甘藷種苗生産施設』(仮称)を建設する。サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)拡大防止を種苗段階で行うことが目的。「健全なさつまいも苗への入れ替えを推進し、基腐病に感染していないさつまいもを普及していくことで、さつまいも確保量の増加を目指す」。総工費約14億円。品種改良や育種などさつまいもの研究開発母体ともする。4月6日、同社の都城市「焼酎の里 霧島ファクトリーガーデン」霧の蔵ホールで開いた発表会で、すでに今年1月に着工したことをはじめ、経緯や施設の概要、具体的な育苗計画などについて明かした。建設現地も公開した。
同社は今年5月、創業108年目を迎える。江夏社長は「九州の恵みであるシラス台地が育んできたさつまいも文化は、芋焼酎製造を営む当社にとって、守り続けていくべき価値のひとつ。当社の持続可能性は、事業基盤ともいえるさつまいも作りにかかっている。さつまいも生産農家はいわば運命共同体。基腐病に対する対策や支援は、最優先で取り組むべき課題であり、生産農家の皆様と一致団結して、この難局を乗り越えたいと思っている」と話した。
新品種の「みちしずく」について「黒霧島などの主原料であるコガネセンガンより基腐病に強く、同様もしくはそれ以上の味を生み出せる品種で明るいニュース」と評した。
さらに一部商品の販売休止に触れ「みちしずくの栽培も支援し、安定したさつまいもの確保を実現し、一刻も早く休売している商品の販売再開を目指していきたい」とした。
同社江夏拓三専務も「持続可能な焼酎造りを目指して」と題し、新施設建設にかける想いを語り、製造部原料担当者が施設運営について説明した。
新施設は同社志比田工場に隣接。育苗ハウスの敷地は広大だ。今年9月から稼働させ、年内11月ごろから生産農家への健全苗供給を始める予定だ。農家は苗を増やし、翌年3~5月ごろ畑に苗を植え付け栽培を始めることになる。
▽所在地=宮崎県都城市志比田町10877番地▽建物構造=鉄骨造2階建て(管理研究棟) オランダ式高軒高ハウス(育苗ハウス)▽延べ床面積=9942平方m(うち研究棟1238平方m、育苗ハウス8704平方m)▽敷地面積 1万7565平方m(東京ドームグラウンドの約1・3倍)
「自社工場生産100%」にこだわる同社。原料芋も100%九州産で、栽培農家は約1200軒、作付面積は約3000ha(東京ドーム約640個分)に上る。
健全な苗を育成するため茎頂培養を行う。茎頂〈成長点〉からはウイルスが検出されず、約0・3㎜の芽を採取し培養し増殖させる。自社で育苗を行っている焼酎メーカーもあるが、茎頂培養から育苗するケースは同社以外に「確認できていない」という。
以下計画。▽1年目(育苗期間)=霧島酒造で250万本分の健全なさつまいも苗を生産し生産農家へ供給▽1年目(本圃生育期間)=約250万本分の苗〈霧島酒造が供給するポット苗(親苗)から生産者がつくる切り苗約75万本+霧島酒造が供給する切り苗約175万本〉から2500~3000tの健全なさつまいもを収穫(そのうち800tは、翌年のさつまいもを生産するための種芋用として確保)▽2年目=800tの種芋から1万5000~2万4000tの健全なさつまいもを収穫。
本紙の「コガネセンガンが全てみちしずくに置き換わるようなことになってもいいのか」との質問には「現在の計画ではすべてを切り替えることは考えていない。基本的にはコガネセンガンをベースに置きながら、コガネセンガンが病気で作れない方に対しみちしずくをどんどん導入していく。結果的にコガネセンガンとみちしずくの比率は変動すると思うが2本柱で考えていきたい」、「実業レベルで必要な原料芋が調達できるようになるのは何年後か」との問いには「まずは生産者の皆様の健全な種芋の更新を優先に考えていきたい。生産農家の種芋が健全になることが、自ずといずれさつまいもの収穫量が増えてくることにつながると思う」と答えた。
