【長崎】酒類卸2社、西九州酒類販売(光冨英造社長、長崎市)と長崎日酒販(富山英社長、西彼杵郡時津町)が11月29日、共同企画『酒と食の提案会』を長崎市の出島メッセ長崎で開催した。飲食店や酒販店などを対象とする展示試飲試食会で、酒類食品のメーカーや輸入業者など約90社が出展し、約1600アイテムの商品を紹介した。来場者は約380人に上り、比率は飲食店6割、酒販店4割だった。2019年10月開催〈第15回〉以来3年ぶり。同地では今年9月23日、長崎・武雄温泉間「西九州新幹線」が開業し地域活性化に弾みがついている。しかも初となる会場は、交流ネットワーク・観光ハブ拠点としてJR長崎に隣接し新設された施設。〝酒再生・新しい時代のニューノーマル〟をテーマに、酒の愉しさを再発見してもらい、酒販・飲食業の繁盛につなげる提案を再発信するうえで最高の舞台となった。
両社が開催告知及び来場御礼など、開催前後に積極的な営業活動を展開する展示会。トレンドをつかみ、需要を創造喚起する企画ブースが特設され、地場卸ならでは長崎県産酒を強力にアピールするのも特徴だ。飲食店・酒販店関係者が楽しみに訪れ滞在時間も長くにぎわい、その様子を伝えるテレビ取材が入るのも恒例。いわば世相を反映し、地域の暮らしにつながる祭りとして定着している。
出品商品アイテムは19年1200アイテムの1・3倍以上。会場ブース配置や出品商品を案内するカタログを廃し、すべてスマホでQRコードを読み取るスタイルに変えた。
3年ぶり開催にこぎつけたことについて西九州酒類販売・光冨社長は率直に「嬉しい」と話した。新しい会場で気持ちも一新。酒類の値上げ仮需後の需要立上りも早いだけに、一層の業況好転へ期待は大きい。その中で「これからの商材を一つでも多くご提案できれば」と〝酒再生〟けん引へ意欲を示した。「ノンアルコールやソフトドリンク系も面白い」など市場へのアプローチはいくつも見えている。
長崎日酒販の富山社長も「やっと出来た」と念願叶ったよう。「飲食店でクラスターが出るようなこともないのに、コロナ禍ではアルコールが嫌われ(飲酒をすることに)罪悪感を持たれるような人もいた。少ない人数でお酒を飲まれる、また低アルコールのお酒が好まれるなかで、これからはスマートドリンキングを含め、いかに若者に飲んでもらえるか。そのため今回は、キャンプを切り口にしたり、ぽん酢サワーなども提案している」と現況を若年層へのアピール好機とする考え。「飛び抜けて売上げが大きな12月」にコロナ8波が到来することが心配され、インフルエンザ並み5類へ引下げる施策転換に関心を寄せている。
新たな飲酒シーンを生み出そうと提案したのが〝NEXTブレイク 映え×ショット〟〝飲み方革命 酢っきりNEWサワー〟〝長崎ハイボール・九州を飲もう〟。「スリングショット」(都光)はオーストラリア産。小さな容器の中にねじれた仕切りがあり、飲むと2つのリキュールが口中で混ざり合うショットリキュール〈都光は別ブースで、ワイン好きが飲みたいノンアルワイン「ヴィンテンス」もアピールした〉。「チッキーミッキー」(フロンティア物産)もパーティードリンクをPR。ドイツ産リキュール。小さな卵型容器を割って楽しむ。同社は韓国産フルーツソジュ「DAMSO(ダムソ)」の販売元でもある。酢っきりサワーは、酢を焼酎と炭酸水で割ったもの。Mizkanの「味ぽん」じゃない方の「ぽん酢」を使うものでは、小瓶のぽん酢を添え客自身に入れてもらう提案もあった。長崎ハイボールは特産果実感あふれるハイボール。九州7県のご当地フルーツ果汁たっぷりノンアルコール「九州果実シロップ&ピューレ」を、熊本県の福田農場が製造販売しており、飲食店ドリンクメニューの各カテゴリー〈ハイボール・サワー・カクテル・ノンアルコールドリンク〉に使用できるとPRした。
〝ちょっとリッチにいつもと違う時間〟提案は、巨大ツリーの周囲にシャンパンや銘醸スパークリング、個性派スティルワインなどを圧倒的なボリュームで揃え行った。熟成シャンパーニュ「ニコラ・フィアット グラン・レゼルヴ ブリュット」は各国エアラインファーストクラス搭載ブランドで、フランス国内販売量15年連続ナンバー1。
テントを据えた〝長崎CANP〟と題したブースでは「カバラン ハードティー ジンソーダ」や250㎖ワイン「バロークス」、様々なRTDなどの缶入酒類、MEIDI-YA「おいしい缶詰」など缶詰食品を集めた。煮詰めて炭酸水を加えるクラフトスパイシーコーラの素などキャンプを盛り上げそうな商材も。また長崎県内蔵元が開催した「杵の川(きのかわ)日本酒×アウトドアフェスト」の様子も伝えた。
〝みんなでスマドリを楽しもう〟企画は、スマドリ=スマートドリンキングのオススメ。「お酒を飲みたい時、飲めない時、そしてあえて飲まない時、飲む人も、飲まない人も、ひとりひとりが、自分の体質や気分、シーンに合わせて、適切なお酒やノンアルコールドリンクをスマートに選択できる飲み方を指す」(アサヒビール)。すでにアルコール分0・5%、また3%以下の商品が販売されており、新たな潮流を捉えたアピールが重ねられた。
来場者を驚かせた商品に、イタリア産スーパープレミアムジン「エンジン Ⓡ オーガニックジン」(リードオフジャパン)があった。まるでエンジンオイルが入っているような缶材やデザインが目を引いた。同社は台湾産ウイスキー「カバラン」の輸入販売元。トリプルシェリーカスクも絶大な人気を博している。
会場でブース出展数が多かったのは和酒で國酒の双璧、焼酎と清酒。商品はもとより、各蔵元の背景にある風土や歴史、人、ストーリーそのもので惹きつけた。
日本酒では原料米や酵母を切り口に造りのこだわり発信で充満。日々の暮らしのなかで楽しんでもらえるようラベルも多彩で、ヒットの足掛かりとなりそうな雰囲気を漂わせた。早くもしぼりたてアピールも見られた。佐賀県の光武酒造場は「光武 KEG DRAFT 純米大吟醸」を紹介。光・酸素を通さない特殊な容器KEYKEGへ清酒を充填・冷蔵しながらサーブするもの。製法・仕組みはクリップクリエイティブ㈱の特許で、九州の蔵元では同社が初導入となる。「KEGごと卓へ運び、その場で注ぐことでライブ感やしぼりたての臨場感を提供することも可能だ」。仕入単価10ℓ2万3500円、100㎖700円提供だと粗利益率は66・4%になる。
焼酎では香り系焼酎や、蒸留技術を生かしたジン等スピリッツ商品などがPRされた。三和酒類は和のスピリッツWAPIRITS「TUMUGI(ツムギ)」を、日本人が積み重ねてきた麹を使った酒造りの延長線上にある、麹文化表現の蒸留酒として紹介した。一方、出展蔵元の多くで炭酸割提案が継続している。最大手の霧島酒造は「利益アップに貢献できる飲み方」とPR。黒霧島25度900㎖瓶を希望小売価格999円で仕入れ380円で提供した場合、利益はロックでの提供だと2801円だが、炭酸割オススメ焼酎1対炭酸水2〈焼酎50㎖対炭酸水100㎖〉なら5481円〈利益率80・1%〉、炭酸多めスッキリタイプ〈焼酎40㎖対炭酸水110㎖〉だと7056円〈同82・8%〉になる。
泡盛の蔵元は、琉球スピリッツ「IMUGE.(イムゲー)」を紹介した。琉球王国時代、米の蒸留酒である官製の泡盛は庶民が日常的に飲めるお酒ではなく、甘藷や黒糖などを使い、各集落の女性たちが味噌麹を造る要領で酒麹を造り自家製造していた〝自家製芋酒〟を復活させたもの。芋焼酎は麹に水と酵母を加えて発酵させる一次仕込み、さらに甘藷を加え発酵させる二次仕込みで造られるが、IMUGE.は二次仕込みの後さらに黒糖を加え発酵させる三次仕込みを行い造られる。
提案会において〝長崎県産酒〟ブース特設は定番。県酒造組合加盟蔵元は23者。うち日本酒専業2者、日本酒・本格焼酎兼業11者、本格焼酎専業10者。壱岐島(長崎県壱岐市)で造られる、米麹仕込み麦焼酎「壱岐」焼酎はGI指定の世界ブランド。長崎県は焼酎と日本酒双方の銘醸地で、しかも海産物に恵まれた土地柄だ。個々の銘酒がアピールされたほか、長崎県「文化観光国際部」物産ブランド推進課が企画する〝お酒とサカナのおいしい関係~おうちで見つけたキャンペーン~〟の周知が図られた。自宅で作った魚やかまぼこ料理と県産酒のセットを撮影したものをInstagram投稿すると抽選で波佐見焼カップが当たるもの。〝おいしい関係〟おすすめペアリングパンフレットも配付された。
島原の酒蔵、山崎本店酒造場のサッカーボール型陶器詰め日本酒が、台湾のスーパー「カルフール」へ輸出販売されたとの話も聞かれた。カタールでのサッカーW杯関連で急きょ商談がまとまり実現したという。
長崎県内で新たに誕生した醸造所も登場。「小浜温泉ワイナリー」(雲仙市)は「長崎ヌーヴォー」「雲仙蜜柑ワイン」を販売。「O/A NAGASAKI CRAFT BEER」(㈱敷島カンパニー、長崎市目覚町)は長崎市内初のクラフトビールブルワリー。パブカフェや酒販店、さらに宿泊施設まで併設している。
提案会では、からすみや海産物燻製などの珍味、洋菓子類も販売され活況を呈した。新規事業〝波佐見サブスク〟案内の場ともなった。KIGAE㈱(長崎県波佐見町、松尾匡悟代表)が今年7月始動したもので、波佐見焼の食器が1カ月10枚1100円〈飲食店等業務利用、一般家庭利用は1カ月50枚まで550円〉28の窯元・商社の商品から選びレンタルできる。