日本酒造組合中央会は6月8日、第58回通常総会を東京會舘で開き、上程の議案を審議可決した。福光松太郎副理事長(石川県)が健康上の理由で退任したことを受けて行われた役員の補充選任では、久慈浩氏(岩手県)を新副理事長として選出。また、「東日本大震災の復興に向けて」を総会決議として採択したほか、「日本酒クールスタイル」を新たな需要開発の一環としてスタートさせることも承認された。
総会には、野田佳彦財務大臣(代理・櫻井充財務副大臣)、川北力国税庁長官、鹿野道彦農林水産大臣(代理・農林水産省総合食料局・中村英男次長)、独立行政法人酒類総合研究所の木崎康造理事長、酒類業中央団体連絡協議会代表として全国卸売酒販組合中央会の國分勘兵衛会長(代理・塩本昇専務理事)が来賓として出席。総会の冒頭、3月11日に発生した東日本大震災の犠牲者に黙祷が捧げられた。
辰馬会長はあいさつの中で酒蔵の被災状況を説明。被害は東北・関東地方で13県270蔵を越え、うち蔵または事務所・小売店舗が全壊した蔵元は15蔵に達し、岩手県では9人の従業員の死亡を確認したと報告した。
さらに「福島第一原子力発電所の事故による放射能汚染問題は、順調に推移してきた日本酒、本格焼酎、泡盛の海外輸出に大きな障害となっている」とし、「国税庁、酒類総合研究所とも連携しながら日本酒、本格焼酎、泡盛の品質と安全性について客観的なデータ蓄積を行い、その上で正確な情報提供を国内外に発信していくことが喫緊の課題」と述べた。
同中央会では、被災した蔵元が多く広範囲に及んでいることから、東日本大震災からの復興を「当面の最重要課題」と位置づけた。東日本大震災を受けて、①今回の震災により被害を受けた酒類製造業について、その復興を促進するため、復興計画期間中、酒税の負担を大幅に軽減すること②壊滅的な打撃を受けた酒造工場、製造設備などの復興のためには、膨大な資金が必要であるが、被災者の自助努力には限界がある。このため、震災で被害を受けた事業用設備などの復旧・整備のための財政上の支援措置を講ずること③原発事故を受けて、EU、米国、アジアなど世界各国で日本から輸出される酒類について、輸入禁止や検査強化などがなされている状況に鑑み、早急に日本国内で酒類の安全性確保のための分析、検査体制の整備を行うとともに、簡素な証明書発行手続きを定めること--の3点を盛り込んだ「東日本大震災の復興に向けて」を総会決議として採択した。(総会決議全文は3面掲載)
また、健康上の理由から福光松太郎副会長(石川県)が退任を申し出たため行われた役員補充選任では、岩手県の久慈浩氏を新副会長として選出した。
平成22年度の信用保証事業は、13者、3億9600万円の代位弁済を行い、信用保証基金から2億4000万円を取り崩しを行ったことが報告された。22年度期末の基金残高は44億7000万円となった。
総会前に開かれた評議員会では、租税特別措置法第87条の酒税の軽減割合が平成23年度から20%に縮減されていることを受け、北陸支部の山田英樹評議員が酒税制度の見直しについて「現行水準において本則化」を求めたほか、福島県の新城猪之吉会長は、「福島県では県内66の組合員のうち51社が被災した。時限的でも制度創設時の30%の軽減割合にもどしてもらいたい」と強く要望した。
これに対し、中央会の岡本佳郎副理事長は、「平成24年度税制改正要望については、制度等委員会、焼酎事業委員会での検討を踏まえ、5月19日の理事会で協議した。中小酒類業者の負担調整措置としての租特87条を近年の酒類の需要の変化なども踏まえ、制度創設当時の水準である30%軽減で本則化すること。あるいは全体として疲弊困窮している中小蔵元の負担力に即応した水準まで軽減し、國酒にふさわしい税制上の取り扱いとするよう、重点要望として要求していく。今般の震災で多大な被害を受けた蔵元については、酒税の大幅な軽減を図るよう、別途要望する」とし、30%軽減での本則化を求めていくとした。
また、山田評議員は、「東日本大震災により東北地方での塩害や放射能汚染による原料米不足が生じた場合、価格が高騰しないことを強く要望する」としたのに対し、岡本副会長は、「震災で被害を受けた東北地方は主要な米の産地で、特に加工用米の取り組みが盛んな地域でもある。地震による大津波や原発事故が原料米におよぼす影響が心配されるが、全農や全集連に対してはまず、安心、安全な原料米を供給するよう求めていくほか、量の確保については万全を期すよう求めていく」と回答した。