三菱系卸4社統合 新会社「三菱食品」を設立

2011年05月13日

 【東京】三菱商事の食品中間流通事業子会社4社の経営統合に関する記者発表が5月9日、千代田区の帝国ホテルで開催され、7月1日に菱食を存続会社として設立する新会社を「三菱食品」とする決定が発表された。なお、2月18日に発表された経営統合に向けての計画は、震災の影響もなく、スケジュール通りに進められる。

 発表会の冒頭、新会社社長に就任予定の井上彪氏(現・三菱商事常任顧問)があいさつに立ち「4社が統合することで、単独では成しえないビジョンを打ち立てていきたい。混血の強さというものを強みにして、それぞれの会社の歴史、文化を束ね新しいイノベーションを創造していく」と統合に向けての意気込みを述べた。

 統合会社の方向性としては、各カテゴリの事業を拡大するとともに、有機的に結合することで、多様化するニーズに対応していく。生産者から生活者に至るまでの“バリューチェーン・コーディネーター”としての機能強化、事業領域の拡大を目指し、さらなるフルライン化の実現を図る。

 海外市場に対しては成長市場である中国・アジアなどにおいて、ビジネスパートーナーとして日本の取引先の海外進出・展開をサポートするとともに、統合新会社が有するSCM支援機能の展開など、海外における流通機能の高度化に寄与していく。

 統合後の事業規模に関しては中長期計画で売上高3兆円、経常利益300億円を目指す。また、新規事業の開拓、M&Aも視野に入れ、規模の膨張だけではなく質的な向上を重点に業務を進めていく。

 新社名に「三菱」の名前を採用したことに関して井上氏は「シェア争いのために統合をするわけではなく、『三菱』を名乗ることで、グループとしてあらゆる対応をしていこうと決めたわけだから、単なる中間流通・問屋を超えた接点を増やしていきたい。統合後はメーカーの経営に関するコンサルタントや、メーカーが原材料の調達に困っていれば親会社と相談することもできる」と幅広い業務を行っていく考えを示した。

 また、同日、菱食(大田区平和島、中野勘治社長)は平成23年3月期の連結業績を発表した。今期の決算は親会社に合わせ12月決算から3月決算へ決算期を変更したことに伴い平成22年1月1日~23年3月31日の15カ月の変則決算となっている。

 2010年度の売上高は1兆8383億4300万円で2009年度(15カ月間)に比べ7%増加した。増加の主要因としてはリョーショクリカーの統合、会計年度の変更などで酒類が大幅に増加したことや、昨年の猛暑による低温・チルドの好調などが挙げられる。うち、酒類の売上高は4910億1400万円で前期比21・7%の増加となった。売上総利益に関しては前期比0・28%減少の8・22%となった。経常利益は物流費を中心としたコスト率の改善などから156億8100万円で前期比28・5%の増加となった。当期純利益は震災での特別損益の計上などがあったが、71億6200万円で前期比15・7%の増加となった。

 東日本大震災の影響としては災害損失として16億円を計上。5月9日時点での被害・復旧状況は東北6カ所、関東9カ所の社屋が破損し、物流事業所(東北・関東エリア)100のうち2センターが復旧に時間を要しているが、社員の人的被害はなかった。