久須美酒造 「こぴりんこ」が好調

2010年03月09日

 【新潟】幻の酒米「亀の尾」を復活させ、漫画「夏子の酒」のモチーフになったことなどで有名な久須美酒造(新潟県長岡市小島谷、久須美記廸社長)が昨年12月に発売した純米吟醸酒「こぴりんこ・コピリンコ」。日本酒業界に新たな風を吹き込むために開発された同商品はどのような想い・経緯で造られたのか。同社専務取締役の久須美賢和氏と、同社と協力し同商品の販売に力を入れている成城石井の榎本真城SVに話を聞いた。

 「この商品だけが売れればいいとは思っていません。日本酒全体が良くなって欲しいという思いで開発しました」と、久須美専務は語る。「こぴりんこ」は、日本酒に触れる機会が無かった消費者に、いかにして飲んでもらうか、ということをコンセプトに置いて開発された商品だ。

 奇抜なネーミングは醗酵学者・小泉武夫氏が酒を飲む擬音を“こぴりんこ”と表現したことに由来し名づけられた。同社と協力し、販売を手がけるスーパー・成城石井の榎本氏は「商品名、ラベルデザインも興味を持ってもらうきっかけになっています」と、売り場での存在感を語る。この商品だけでなく、日本酒全体を売りたいという思いは消費者も感じるところがあるようだ。ひらがなとカタカナの2種類のラベルを用意したことも、同社の遊び心が伺える。

 売り場にも新しい施策を盛り込んでいる。あえて他酒類との境界である日本酒コーナーの隅に置いたり、ビールとともに冷ケースに配置するなど、今までの日本酒とは違う売り方をしている。普段、ワインや焼酎を飲んでいる人に手に取ってもらいやすいように、という配慮だ。こういったことから、日本酒の構成比が高い店ではもちろんのこと、あまり日本酒の動きがない店でも、構成比が高い店と同様に動きが良い。

 価格訴求型の商品があふれる中、300mlで700円という決して安くない値段。デフレ市場に対する挑戦の意味も込めている。「現在の日本酒市場は量を飲む時代ではなく、日本酒をどう楽しむかになってきていると感じます」と、お酒をただ飲むのではなく、テーブルコーディネートとして楽しむ消費者も増えている現状を久須美専務は語る。300mlという小容量にしたのも、4合瓶はテーブルの上では大きすぎる、という理由がある。

 「こぴりんこ」には多方面からの協力、さまざまな人の思いが詰まっている。新しいことに挑戦し、人々の和を広げ、日本酒復権を目指す久須美酒造。今後もさまざまなアイデアを業界に提案してくれることだろう。