大阪の三笠フーズ 事故米を酒造原料に転売

2008年09月12日

 「過去に聞いたこともない悪質なケース。酒類業界の受けた被害は計り知れない」。三笠フーズによる残留農薬やカビ毒を含んだ事故米の不正販売は、酒類業界に深刻な影響を与えている。現在までに事故米の使用が分かっているのは九州の焼酎メーカー7社と清酒メーカー1社だが、9月11日、新たにアサヒビールの甲乙混和焼酎「かのか」と本格焼酎「さつま司」にも使用されていることが判明した。事故米を使用した商品の回収、今後の酒類市場への風評被害。酒類業界の受けた被害が、どこまで及ぶのか。現時点では想像もできない。

残留農薬メタミドホス、カビ毒アフラトキシンの残留した事故米を販売したのは、大阪市北区に本社を置く米穀販売会社、三笠フーズ。本来は工業用ノリなどに使用しなければならないMA(ミニマムアクセス)の輸入事故米を、食用米とは比較にならない安価で仕入れ、それを国産米と偽って焼酎メーカー、清酒メーカーに転売していた。

 三笠フーズが2003年から2008年の間に農水省から購入した事故米は、1800tと見られており、このほぼ全量が食用として転売された可能性がある。現在までに事故米の転売が確認されているのは、鹿児島県の西酒造、喜界島酒造、西平本家、鹿児島酒造、熊本県の六調子酒造、抜群酒造、福岡県の光酒造の焼酎メーカー7社と、熊本県の美少年酒造の清酒メーカー1社。

 また、新たに西酒造に一部を製造委託していたアサヒビールの甲乙混和芋焼酎「かのか」と本格焼酎「さつま司」にも、事故米の一部が使用されていたことが確認された。

 モラルを逸した米穀販売業者と、それを見逃してきた農水省の怠慢が、酒類業界をとんでもない窮地に陥れようとしている。

 今回の事故米の食用への偽装、そして酒造メーカーへの販売という衝撃の事件に対し、ある醸造用原料米販売業者は「当社にも扱っている米は大丈夫か、という得意先からの問い合わせが殺到しており、対応に追われている。産地偽装などと比べても、これまで聞いたこともないほど悪質なケースだ。三笠フーズは以前から大量に事故米を買っていたので、おかしいとは思っていた。今後もどれだけの広がりを見せていくか分からないだけに、酒類の需要にどのような風評被害が出るのか心配をしている」と不安を隠さない。

 大阪市北区にある三笠フーズと、関連企業の辰之巳の本社。取材に訪れた本紙記者に対し、同社の社員は「今は誰も対応できる人間がいないのでコメントできない」と答えた。

 これから本格的な需要期を迎える清酒と本格焼酎。その矢先に起こった今回の事件が、今後の酒類市場にどのような影響を与えるのか。利益を優先し、安全を無視した三笠フーズの犯した罪はあまりにも重いと言わざるをえない。