キリンビール福岡工場  “ビール5000年の旅”

2008年08月07日

 【福岡】数千年の時空を超え、実験考古学で古代、中世のビールを再現し、日本のビールのルーツを探る。人類にとってのビールの存在へも思いをはせる--。キリンビールが取り組んできた“ビール5000年の旅”探究プロジェクトの全貌を公開する総括展が、全国11工場で巡回している。すでに8工場で開催しているが、同社福岡工場(朝倉市、箕浦直哉工場長)では、7月24日から9月15日まで同展を開催。一般公開に先立つ7月23日には同工場で、北部九州統括支社(福岡市、平木康夫統括支社長)が会見を開き、再現した“古代エジプトビール”と“中世グルートビール”の味覚評価会も催した。

 プロジェクトについて箕浦福岡工場長は、注がれた社員の熱意に触れ、本社広報担当の山本武司さんも「心のひだという切り口でのプロジェクトだった」と語った。同社の社歴は100年。次代へと事業をつなぐうえでも重要だと位置づけた。

 2001年から始まったプロジェクトの第1弾は、「ビールのルーツを探る、古代エジプトビールの復元」。当時の製法は壁画から連想。干しブドウやナツメヤシで酵母の種をおこし、それにパンを加え酵母を培養することで発酵力を高めるなど、ビールが高度な技術で造られていたことを証明した。泡が立たず、酸味が強い白ワインやヨーグルトのような味わい。「ワインはファラオの飲み物。ビールは皆が等しく口にする飲み物で、ピラミッドづくりの報酬もビールだった」。

 第2段は「現代のホップビールのルーツを探る、中世グルートビールの復元」。ヤチヤナギを中心に数種のハーブを使用し、複雑な香りとさわやかな苦味が特徴のビールとなった。「各家庭でもビールが醸造され、領主にとっては重要な収入源。ビールはおふくろの味、地域の味だった」。その後、ビールづくりのプロが登場し、大航海時代を迎えると、「船旅に欠かせない重要な食糧になった」。

 第3段「日本のビールのルーツを探る、日本のビールの先がけ」では3人の人物をクローズアップ。国内初の醸造に挑んだヘンドリック・ドゥーフのビールには、大麦・小麦と、ホップの代わりにチョウジを使った。日本人初の醸造、蘭学者・川本幸民のビールは日本酒用酵母で仕込んだ。ビールの製造・販売を日本で初めて産業化したウィリアム・コープランドのビールは、熟成期間を長くしコクのある味わいを再現した。

 総括展では、映像やパネルで復元の詳細を伝えるほか、当時の食卓も再現。復元醸造に使った道具類も展示する。開催期間中の8月23日には応募の一般消費者を対象に、復元ビールの味覚評価会も開く。