月桂冠総合研究所 米麹製造工程でペプチド多量生産法を確立

2017年10月19日

 月桂冠総合研究所は、抗酸化や鉄分吸収促進など機能性を持つペプチド「デフェリフェリクリシン」を、清酒原料のひとつ、米麹の製造工程で多量に生産する方法を確立した。その生産量は、清酒醸造に用いられる一般的な米麹に含まれる10倍以上まで高めることができた。米を原料とした製麹でデフェリフェリクリシンを多量に造ることで、米麹を用いる発酵食品にその機能性を付与でき、食品産業への応用が期待できる。この研究成果を、「デフェリフェリクリシン高生産麹菌の製麹と応用」と題して、「平成29年度・日本醸造学会大会」で10月12日発表した。

 今回の研究では、デフェリフェリクリシンを多く生産する麹菌(月桂冠が開発し、2012年3月に研究成果を発表、その後、研究開発を重ねた菌株)を用いて、麹造りの工程でデフェリフェリクリシンの生産性を高められる温度、湿度などの最適な条件を見出した。この条件により、100キログラム規模にスケールアップした麹造りにおいても再現が可能であることを確認している。

 月桂冠では、麹菌がつくるデフェリフェリクリシンが、抗酸化作用により食品中の油脂の劣化を防ぎ、体内では脂質の酸化を抑え、鉄分を包み込むように結合するキレート作用によって鉄分の吸収を促進するなどの優れた機能性を有することを確認している。今後、清酒をはじめとする発酵食品に機能性を付与することなど用途の開発を進め、産業での活用を目指していく。

 【学会での発表】▽学会名=平成29年度日本醸造学会大会▽会場=北とぴあつつじホール(東京都北区)▽演題=デフェリフェリクリシン高生産麹菌の製麹と応用▽研究・発表者=○伊出健太郎、柏原宏行、大澤麻水、戸所健彦、福田克治、堤浩子、秦洋二(○印は演者)