日欧EPA 日本酒、ワインにも追い風

2017年07月13日

 日本とEUで大枠合意に至ったEPA(経済連携協定)で、ワインの関税および清酒の関税の即時撤廃のほか、地理的表示の保護、単式蒸留焼酎の容器容量規制の緩和が盛り込まれたことが分かった。

 日EU・EPA交渉では、「EU関税や輸入規制の撤廃、日本のGI(地理的表示)の保護を通じ、日本産酒類の競争力を高め、新たな市場を確保すること」が期待されていた。交渉の最終結果では、日本から輸出される酒類の関税を即時撤廃することで合意したほか、日本に輸入されるワインについても即時撤廃で合意。一方で日本に輸入される清酒、焼酎については11年目に撤廃されることで合意した。

 また、GIでは清酒の「日本酒」「白山」「山形」、焼酎の「壱岐」「球磨」「薩摩」「琉球」、ワインの「山梨」を相互保護でも合意。日本産酒類のブランド価値を向上させ、輸出促進につながることを期待する。さらに非関税措置として、これまでEUワイン醸造規則に適合しているものしか輸出が認められておらず、適合している旨の証明書の添付が義務付けられていたが、EUは新たに「日本ワイン」の補糖、補酸、ぶどう品種などを承認し、「日本ワイン」については醸造方法や輸出証明など輸入規制を撤廃する。これにより協定発効後は「日本ワイン」の自由な流通販売が可能となるほか、自己証明が可能となることでコスト負担が大幅に軽減されることになる。

 また、単式蒸留焼酎はこれまで700ml、1750mlなど決められた容量以外の容器は流通できなかったが、今回の合意で協定発効後には焼酎の四合瓶や一升瓶での輸出も可能となる。

   ◇   ◇

 EU域内から日本へのワイン輸入量は、2008年には8万5872klで全体のシャアは72・2%だったが、2016年には10万1801klと数量は大幅に増加しているものの、シェアは59・1%と大幅に落ち込んでいた。変わって増加してきたのが、いち早くEPAを締結し関税を段階的に削減しているチリで2008年には1万3293klであったのが2016年には5万535klと4倍近くにまで増加。さらに日本のワイン市場に占めるチリワインのシェアは30%近くにまで高まっており、EUのワイン業界では日EUのEPA協定の締結は悲願でもあった。同時に日本のワイン業界にとっても高い品質から世界的にも評価の高い「日本ワイン」がEUへの輸出規制が撤廃されることで、輸出の自由度が高まることを期待する声も多い。

 清酒については、近年急激に輸出量が高まっており、平成28年の輸出量は1万9737klで155億8100万円となっている。しかし、EU向けは1605kl、10億8500万円となり、米国や東アジアなどに比べると少ないのが現状だ。

 国税庁では今回の日欧による相互関税の撤廃や輸入規制の撤廃、さらにはGI保護の確保によって、「日本産酒類にとっては5億人という巨大なEU市場を新たに開拓することができる。こうした輸出拡大のチャンスを生かすことが重要。今後も日本産酒類の競争力強化のため、日本産酒類の情報発信や輸出環境整備、技術支援などのための措置を一層講じることが必要」としている。