泡盛香りのホイール開発 沖縄国税事務所

2017年05月19日

 【沖縄】泡盛から感じる香り・味わい表現を整理した「泡盛フレーバーホイール」が完成。沖縄国税事務所が4月26日、那覇市の県政記者クラブで発表した。表現を分類・統一することで、造り手や売り手、飲み手が共通言語で意思疎通を図ることが可能になる。酒質の見える化に資するなど商品の特徴を業界内で共有したり、魅力を消費者へ伝えるツールにもなりそうだ。

 泡盛の香味については「これまで泡盛の研究者、販売者、愛好家らがそれぞれの方法で表現してきた。研究者は専門用語で語り、消費者は身近な食品に例えるなど、統一された表現ではないためお互いが同じ内容を話しているのかも分からなかった」。研究・製造現場で表現が人により異なったり曖昧だと品質管理や研究あるいは商品開発の方向性が定まらない。「ひいては消費者に泡盛の魅力が伝わらない」。そこで「泡盛の造り手から消費者まで共通の表現で泡盛の香味について会話することが可能となるよう」沖縄国税事務所・沖縄県工業技術センター・琉球大学・沖縄工業高等専門学校の職員によるワーキンググループが制作したのがホイールだ。

 用語は収集・整理の結果99とし、うち49について似た香り・似た味わいのものを近くに車輪状に配列した。似たような香りが並んでいた方が「言葉のある位置を探しやすく、記憶しやすいから」。用語を「甘い・カラメル様・焦げ」など17種類に分類。その外側に一般的な用語、「バニラ」「ドライフルーツ」「カラメル様」「醤油様」「焦げ様」と並べた。ホイール上に無い50用語は別表に、専門的な化学物質名やより具体的な食品名を併せ記した。

 制作にあたり1つの特性は1つの用語で表すことで、人により表現が異ならないようにした。さらに良し悪しは表現しないものとした。「雑味」は一般的に使われている用語だが「苦味、うま味、渋味及び口あたりが不快な味という複合的感覚および主観的感覚が強いため排除した」。共通認識を深めるよう、においの見本(実験用試薬)を記載。今後は身近な食品での見本設定も行う。

 ホイールはシンプルで視覚的。“酒質の見える化”で活用の幅を広げそうだ。「ラベル表示に使えば消費者の商品選択に役立つ」。メーカーにとっては目指す品質とのかい離を測る指標となる。

 暫定的な措置として、琉球王国・尚順男爵の表現を「敬意を表し掲載した」が今後検証が必要だとした。古酒から感じられるにおいで3つ=白梅香(白梅香かざ、鬢付け油香)、熟れたほおずき(トーフナビーかざ)、雄ヤギ(ウーヒージャーかざ)。同様に用語設定したが由来成分が不明なものがあり、その解明を目指す“泡盛研究の羅針盤”とも位置付ける。

 泡盛の需要喚起が課題の現状下、ホイールは生販三層業者間、愛飲家・消費者間での双方向コミュニケーションツールとしての活用が期待されることから、講習会なども重ね周知普及を図るとしている。会見当日も、報道関係者・消費者向け勉強会を開いた。

 香味に関するホイールはコーヒーや紅茶、だし、チョコレート、チーズなど幅広い食品分野で制作済み。酒類ではワインやビール、ウイスキーなどであり、2006年には清酒で制作されている。

 「泡盛の香りは、麹菌の生やし方、酵母の種類、発酵の温度、蒸留の方法、貯蔵方法などにより変わる。フレーバーホイールを参考に、泡盛から様々な香りや味わいを見つけだし楽しんでほしい」。