【中四国=広島】「西条酒造協会」(東広島市、石井英太郎理事長)は3月24日(金)、第72回「西条清酒品評会」をグランラセーレ東広島で盛大に開いた。昭和27年から始まった歴史伝統を誇る品評会で、順位を競うのは全国でも珍しいという。
加盟8社のうち、6社12蔵が令和4酒造年度の製造新酒計22点(10蔵各2点、2蔵1点)を出品。10人で香りの高さや良さ、香味の調和、味の良さなどを調べた。
審査員は、▽西条産地呼称清酒認証審査員=上岡大嗣(賀茂鶴酒造)石﨑健二(白牡丹酒造)西條鶴醸造(伊野本真彦)▽広島県酒造組合=土屋義信(技術顧問)▽広島県食品工業技術センター・生物利用研究部=大土井律之(部長)山﨑梨沙(主任研究員)▽酒類総合研究所=金井宗良(醸造微生物研究部門・主任研究員)樫尾篤樹(成分解析研究部門・研究員)▽広島国税局・鑑定官室=江村隆幸(室長)宮脇達也(主任鑑定官)の各氏。
厳正な審査の結果、亀齢酒造・五号蔵の西垣昌弘杜氏が3度目の優勝(最優秀・1位)。昭和32年3月生まれの66歳で、同社に26年勤務し、杜氏歴18年目。出品酒は、精米歩合40%の県産(造賀)山田錦で、正月明けに仕込み始め、2月中旬に完成した。
記者会見やインタビューなどを通して「蔵人皆の輪を重視しており、丹精込めてしっかり造った。弊社は淡麗辛口タイプでキレの良さが特徴で、その通りに仕上がった。今期はコメが硬くて粕歩合も高く吸水なども大変だったが、もう1杯飲んでもらえるような酒を今後も造っていきたい」と喜びと抱負を語った。
今年の酒造期については、江村室長が「総じてコメはやや溶けにくく、麹造りに苦労された。寒暖の差は大きく、12月・1月とも下旬が強い寒波で醪の温度管理に注意を要した」と講評。製成酒の状況も「コメの影響で綺麗な味や華やかな香りが多数あったが、米麹のふくよかな旨味が調和するなど当地区の酒造技術の高さがあらわれ、香りや味の濃淡は各製造場の個性が出た」と高く評価した。
同品評会の名誉会長は、西条税務署の横村隆文署長で、式では石井理事長が冒頭あいさつ。「4年ぶりの開催で苦労したが、当市は10年前の2013年7月に日本酒の乾杯条例を制定し、改めて広く浸透を願う」と応援を要請した。
来賓あいさつも広島国税局の瀧口信雄課税第二部長、高垣広徳市長、広島県酒造組合の梅田修治会長らが登壇。瀧口部長は「ようやく回復し、インバウンドも増加。G7は清酒拡大の絶好の機会となり、行政としてもご要望を受けて支援したい」。
高垣市長は「西条酒は多くのファンを魅了する本市の宝の1つ。飲食店の回復基調で地域も賑わうなか今後も町づくりを進めたい」。梅田会長は「過去3年間十分な活動ができなかったが、G7で需要拡大が見込まれるなか組合として初めて県の統一ラベルを試みた。世界に発信するPRの場を局などが設けられ、ぜひ協力を願いたい」とそれぞれPRした。
西垣杜氏の祝辞のあと、最高40年の永年勤続者ら総勢22名の表彰があり、長年の活動と活躍を称えた。