永田醸造機械 九州に米麹生産・販売「麹事業部」

2019年08月29日

 【福岡】“ナガタ”(永田醸造機械㈱本社・神戸工場=兵庫県神戸市、荒木基弘社長)は明治39年創業来、清酒・焼酎をはじめ醤油・味噌など醸造産業の発展に貢献してきた信頼のブランドだ。九州エリアの事業拠点「ナガタエンジニアリング㈱」(福岡県宮若市、同社長)では3年前「麹事業部」(川本健治部長)を設け米麹の生産・販売を始めた。実業規模での製麹を行うことで、新たな発見がありより優良機の開発につながっているという。社員が現場レベルで製麹技術を磨く場ともなっている。

 醸造酒の品質を左右するのが原料の浸漬・蒸し・冷却などの工程で、同社はその機械化実現の先駆けとして知られる。

 製麹工程においても業界要望を満たす機種開発に傾注してきた。代表機の一つが円盤型「NFT自動製麹装置」。「酒麹・醤油麹・味噌麹などそれぞれの特性に基づき、最適な製麹環境のもとで製麹を行い、引き込みから手入れ、出麹までの全作業を自動化し、省力化を図るとともに高品質の麹が得られる。麹に最適な品温、湿度環境のもとで培養を行い、高品質でその用途に応じ総破精(はぜ)麹から突き破精麹まで自在」。

 ナガタエンジニアリングでの米麹生産も同機(1t処理タイプ)により行われている。

 原料米は福岡県産の加工用米がベースで精米歩合60~90%。米の性状に合わせ、仕込みごとに原料処理に必要な諸条件を調整し、製麹では完全自動化プログラム制御で「雑菌数を極端に減らした酵素力価の強い麹造り」を行う。その後、低温乾燥で白く仕上げる。

 製麹・乾燥・冷却に64時間もかける。低温乾燥により、酵素力価を上げるとともに雑菌を減らすことで、1年もの間、変質することなく保存が利き、外観の白さも維持されるのが同社米麹の特長だという。

 品質維持と安全管理のために、仕込みロッドごとに製品の産地証明・麹の力価分析・細菌数等の分析から総合評価を行い製品検査証明書を発行している。

 出荷製品は蔵元へ納める業務用30㎏袋がメイン。大方が黄麹仕込みだが、クエン酸生成の白麹仕込みもある。白麹菌は焼酎蔵でよく使われるが、こちらも清酒蔵の要望に応えるもので、従来の仕込みへ影響することなく新たな酒質の商品づくりを行うことに利用されているという。

 ほかに一般消費者向け300g小袋をスーパーや大型モール店へ販売。小粒タイプもあり炊飯器やヨーグルトメーカーを使った甘酒の作り方、発酵期間中の注意点など分かり易い塩麹の作り方――のレシピも記し、道の駅などでも人気だという。

 一連の米麹生産を、蔵元など造り手と同じ現場感覚で行うことで、醸機の改良・開発につながっている。「サニタリー種麹撒粉機」はワンタッチ分解で衛生機能を強化した新機種だ。工具を使わず麹菌接触部はすべて分解が可能で、仕込み後に残った種麹の回収や、ホッパー、スクリュー内に付着した種麹を完全に取り除き洗浄できる。ワンタッチ分解できる構造改善で「洗浄時間の短縮とサニタリー化」を実現した。

 永田醸造機械の社員は現在約50人。ベトナム人など海外からの技能実習生も積極的に受け入れている。荒木社長は、ナガタエンジニアリングでの米麹生産事業を「社員教育の一環として活用していく」考えで麹造りのプロ育成に意欲を見せる。創業100年超の老舗だが現場主義を極め、醸造業の発展に寄与する挑戦を続けるスタンスに変わりはない。