清酒「泰斗」発売20周年 記念の酒会

2016年03月24日

 【熊本】熊本の銘酒として評価を高めている日本酒「泰斗」(たいと、醸造元・千代の園酒造=本田雅晴社長、熊本県山鹿市)。始まりは「熊本でも他県に負けない旨い日本酒が製造され、その熊本の日本酒を売りたい」との想いだった。造り手と売り手が信頼・連携を深め誕生から20年。地元での引き合いも強く輝けるブランドへと成長した。節目を祝う酒会「発売20周年泰斗を楽しむ会」が3月6日、熊本市内のホテルであり310人の愛飲家が集った。

 楽しむ会としては13回目。「泰斗」を支える生販連携の母体「くまもと酒文化の会」(藤原謙吾会長=熊本市「藤原商店」)が主催した。

 熊本は日本南限の銘醸地。吟醸酒造りの礎として名高い熊本酵母が、野白金一氏によって昭和28年ごろ分離実用されたことでも知られる。同酵母は昭和43酒造年度から協会9号酵母として全国へ頒布。発酵管理の目安となる研究所・萱島昭二氏の“B曲線”も流行語になった。“YK35”(Y=山田錦を、35=%精米歩合で、K=熊本酵母・協会9号酵母で仕込む)が全国新酒鑑評会「金賞」受賞の方程式となり、吟醸酒ブームの礎を築いた。

 その熊本酵母を使い、伝統的な熊本流の醸造技術を生かし、県産山田錦などで造られるのが「泰斗」だ。平成7年6月、県内酒販店14店の販売でスタート。その後趣旨に共感する酒販店が加わり、現在県内26店・県外6店・計32店で活動している。販売量はすでに100石を突破。200石達成へ勢いを増している。

 「泰斗」は現在3タイプ(純米吟醸・特別純米・特別本醸造)7品目。県産の亀の尾で仕込んだものもある。今期は熊本県産の山田錦で純米大吟醸の仕込みに挑戦。今秋発売を控え同会で初披露目し味わってもらった。

 会では開宴に先立ち、酒の神様・野白金一氏にスポットを当てた劇団「不思議少年」の朗読劇を上演。熊本醸造界変革の歴史や造り手の熱い想いを伝えた。

 藤原会長は「泰斗は成人式を迎え年間(1・8l)1万本を超えることが出来た。今後ともご愛顧願いたい」とあいさつ。蔵元の本田社長は「あっという間の20年、やっと20年という感じがする。これからもお酒屋さんと一緒に全国に誇る酒となるよう研究を重ねていきたい」と語った。

 参加者を代表し乾杯の音頭をとった平原輝雄さん(75=熊本市在住)は「これからも皆が喜ぶお酒を造ってほしい」と話した。昔からの「泰斗」愛飲家で「まだまだ美味しくなるはず」と激励の言葉も重ねた。

 若手酒販店の一人は「泰斗は当店にとって無くてはならないお酒。皆さんと苦楽を共にし、美味しい熊本のお酒を伝える意味を教えてくれたようにも感じる」と振り返った。