第26回全国久保田会総会 商いの原点問う講演も

2011年05月20日

 【宮崎】全国久保田会(熊田裕一会長)の第26回総会が5月15日、宮崎市のシェラトン・グランデ・オーシャンリゾートであった。同会は朝日酒造(平澤修社長、新潟県長岡市)の清酒「久保田」を取扱う全国の特約酒販店組織(今年3月末現在会員752店)で、376店・404人が参集(出席率50%)。情報交換を行い交流も深めた。久保田の2010年度上半期(10年10月-11年3月)の販売は前年同期比1%減で推移。今年3月単月では16%減で震災影響が顕著に表れた。今年6月完成予定の蔵「新松籟蔵」の概要が報告され、講演「勝ち組より価値組を目指そう」(杉山フルーツ<静岡県富士市>杉山清代表)も聴講した。

 冒頭あいさつで熊田会長は、「久保田がたくさんのお客さんに愛され、ファンづくりにまい進し26年目を迎えたが、これからは日本の復興のお役に立てるよう努力していきたい」と一層の研さんを誓った。地方開催については、会員店の負担や便宜に配慮し、今後は見合わせの考えを示した。

 平澤社長は「開催には賛否両論があったが、自粛自粛じゃ地方経済も成り立たないし、ひいては日本の経済も落ち込んで行く。宮崎は口蹄疫から鳥インフルエンザ、新燃岳の噴火で三重苦に苦しんでいる。こういう時だからこそ存在価値を発揮するためにも、是非この宮崎の地でやりたいと思った」と語った。原発事故に触れ、安心安全の確保にも言及。「現在まで新潟県の大気、水に関し特に問題となるような値は観測されていない。当社製品に関しても新潟県環境衛生中央研究所で安定的に測定できる体制を構築しているところだ」と訴えた。

 今後の販売動向には強い懸念を示した。「自粛ムード、計画停電、原発事故により3月以降、大幅に落ち込んでいる。4月も82%。輸出も震災以後、EUならびに中国において、日本食の輸入制限、禁止の措置が取られ、急激にブレーキがかかってきている。この状況がアメリカならびに韓国に波及しなければいいがとの思いを持っている」。

 厳しい状況下、6月には新製造蔵が完成する。「仕込みタンクの大きさは3分の1、敷地面積は4・5倍になった。決して増石をするためにつくったわけではない。あくまで品質本位で生きていく、そのための設備投資だ」と強調した。

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 販売状況については細田康・常務取締役営業部長が、醸造状況や新蔵については勝又和明・取締役製造部長が報告した。

 久保田の直近年間09年度(09年10月-10年9月)の販売実績は、4379kl(約2万4000石、08年度比96%)。平均取扱量は31・8石だった。10年度初回受注は2%増、平均32・8石。10年度上半期の販売は2793kl(約1万5500石)、前年同期比99・3%で着地した。なお朝日酒造全体では4379kl、98・6%。

 久保田販売の単月推移は、▽10年10月=95%▽11月=99%▽12月=108%▽11年1月=95%▽2月=91%▽3月=84%。

 同社の輸出量は09年度178kl(約1000石)。10年度上半期は136klで32%増。通期で240kl程度を見込める推移だったが、原発事故で下回るもようだ。

 後継者を育成する「松籟塾」は10期修了で141人が卒業。よりキメ細かなフォローが出来る体制を整えるとした。「量販店等での販売の対抗策」として、来月をメドに会員店名を、ホームページに掲載する予定も報告された。今後は飲食店での販売低迷も予想され、売上げが飲食店や企業ギフト等に偏り過ぎている場合には、「バランスの見直し」(細田常務)に取り組んでほしいと求め、「今こそ再生する気持ちで、来店するお客様を増やすべく、お客様づくりに注力していただきたい」と訴えた。

 「新松籟蔵」は6月完成、9月下旬仕込み開始予定。従来18t仕込みを6t仕込みに切り替えるのが特徴。原料米の処理工程で吸水のバラツキを解消するなど、高品質化へ寄与する設備を備える。「人が中心を基本に、手間を惜しまず安心安全で美味しいお酒を届けたい」(勝又取締役)と語った。なお契約栽培米の比率は22酒造年度で48%にまで高まっている。今後60%まで高める目標を掲げる。

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 販売店の取り組み事例を2氏(「地酒処 田村本店」田村洋文=福岡県、「黒崎商店」黒崎有利子=栃木県)が発表。田村さんは酒屋をサービス業として捉え直し、接客や演出に関する質の向上に従業員と共に臨み、一般消費者向け販売比率を41%にまで高めている。黒崎さんは、再利用品を店内レイアウトに生かす。来店客増につなげるため、目指すのが地域の全戸訪問。「酒屋が出来る喜びを力に代え行動していこう」と呼びかけた。

 講演講師の杉山さんは、果物屋が作るゼリーが話題。自らの実践に重ね商売の理念を語った。「損得より善悪が先」「身の丈で。屏風は広げ過ぎると倒れる」「価格で奪ったお客様は価格で奪い返される」「業績や成長は継続させるための手段に過ぎない」。お客様を裏切らない商いの原点を掘り下げた。

 今総会には被災地からの出席も。福島県の酒販店主は、自宅は被害で住めず店舗で寝泊りし商いを続けている。「こんな時だからこそ元気な姿を見せなければ」と久保田への思いを言葉に込めた。