【大阪】清酒「浪花正宗」など高付加価値酒を醸造する浪花酒造(阪南市尾崎町、成子和弘社長)は、先日行われた「平成20酒造年度全国新酒鑑評会」において、出品酒が金賞を受賞した。
酒造りの先頭に立っている成子嘉一氏は、今年から杜氏となった若手酒造家。24歳の時から同社で酒造りに従事して以来、14年目で杜氏に就任。杜氏一年目で金賞という栄冠を手にした。
一年目ということで、毎日悩んでいる暇などなく、追われるように一つひとつ確実に作業をこなしていく日々。その中でも出品酒に対しては「すべてをやり尽くしました。気力・体力・頭をフル回転させ、良いと思うことはすべてやりました」と持てる力をすべて注ぎ込んだ。出品酒ができた時は15㎏やせていたそうだ。
その酒が金賞受賞。「聞いたときは喜びがこみ上げました。苦労が実ったことはうれしいというか、一安心という気持ちです。しかし、出品酒に対しての苦労、作業の辛さが甦って、来年もこの苦しみを味わうのか、と複雑な気分になりました」と、語る。それほどまでに金賞は重い。
大阪は工業技術センターなどの酒造りを指導する機関がない都道府県の一つ。同氏は情報収集に尽力し、新種の酵母の扱い方など、あちこちの研修会に参加し勉強に力を入れた。
また、名人と呼ばれた大ベテランの前杜氏の存在は大きなプレッシャーとなっていた。「杜氏が変われば、酒の味は変わる。どんな酒を造っても前杜氏には、とても及ばないと言われるだろうし、それは覚悟の上でした」。そう語る成子さんを蔵人全員で支えた。こうした努力、蔵人たちに恵まれた環境が今回の受賞に繋がった。
来年も今年同様に安定した酒が造れれば、と語る成子さん。「今年は酵母の特性を生かしきれたと思います。しかし、反省点もたくさんあったし、来年は来年で一からの造りです。金賞を取ったからといって、これで終わりではありません」と今後も良い酒を造り続ける意気込みを語った。